「津波中止」という異例の事態にも楽天ナインは冷静だった。2月28日、先発だった田中将大投手(21)が試合前のブルペン投球の最中に横浜戦(宜野湾)中止のアナウンス。田中はそのまま打者に立ってもらい、テンポを上げて約60球の本格的な投球を行った。スライド登板など調整変更は行わず、予定通り7日の横浜戦(長崎)に先発することになった。

 宜野湾球場前には細い通路一本を隔てて、美しい沖縄の海が広がっていた。海上保安庁の巡視ヘリコプターが「海を見ている方、ただちに避難して下さい」と物々しく勧告して回った。だが喧噪をよそに、田中は黙々と投げ込みを続けた。クイック、変化球も織り交ぜた試合同様の投球。実戦登板に代えた。投球終了を待って、チームは宿舎へと“避難”。田中も大わらわでバスに乗り込み事なきを得た。

 ブラウン監督は「試合で調整してほしかったので残念。ただ、地球の裏側で多くの人が犠牲になっている。安全が最優先です」と被災者に配慮。田中についても「決まっているローテーションを崩す必要はない」と心配していなかった。チームは1日に仙台に戻り、2日はKスタ宮城で全体練習の予定。本拠地で仕切り直す。【宮下敬至】

 [2010年3月1日9時10分

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