<阪神11-5中日>◇29日◇甲子園

 タマヤ~、ドドンッ!

 阪神が24年ぶりに甲子園で5発打ち上げ、中日に大勝した。主役はクレイグ・ブラゼル内野手(30)。競い合うかのように広島戦の巨人ラミレスとそろって3打席連続でアーチをかけ本塁打リーグトップタイにくらいついた。2回、3回にソロ弾を放ち、5回は26号2ランを中堅右に運び“ハットトリック弾”が完成。新井、城島と初の「AJB」そろい踏み。甲子園でのチーム1試合5発は86年9月23日中日戦以来。その試合で3発を放った真弓監督も6月勝ち越しを決めるド派手な勝利に酔った。

 球団史に残る「ハットトリック」だ。ブラゼルは「今日は本当にグッドデイ。すべての要素がうまく使えたホームランだ」と胸を張った。阪神が誇る決定力が本塁打ラッシュを見せた。

 (1)阪神2年目の進化

 2回先頭で朝倉の外角シュートをきっちりと振り抜いた。右から左に吹く浜風に乗って左翼ポール際に飛び込んだ。生粋のプルヒッターが逆方向にも打てるように成長を証明した。先制24号ソロに「厳しいコースだったけど、しっかり手が伸びてバットで強くたたけた。甲子園も味方してくれた」。

 (2)ホームラン打者の魅力

 3回1死の2打席目、今度は夜空に大きな放物線を描いた。かつて「高校時代は120~130本ぐらいホームランを打った」と豪語したブラゼルの面目躍如だ。規格外のパワーで、滞空時間の長いアーチをかけた2打席連続25号ソロだ。

 (3)集中力

 5回の3打席目に入る直前、本塁打キングを争う巨人ラミレスの3連発を聞いた。「これは3発目もいかなきゃしょうがない」と仲間にジョークを飛ばし、ネルソンの変化球を中堅右へ。Gの主砲に並ぶ26号2ラン。「甲子園の右翼は(浜風で左打者に)不公平というか。ただちょうど風が止まった。まさかそうなる(3連発)とは」。02年のアリゾナ秋季リーグで経験したという「ハットトリック」を再現した。

 甲子園での3打席連続弾は、阪神の外国人助っ人では初の快挙。あの最強助っ人バースもなしえていない。「グレートなこと。阪神の歴史の中に入っていけることは光栄。名誉なことだ」とB砲。チームはこの日、甲子園で1試合5発。86年9月23日中日戦以来24年ぶり、しかもラッキーゾーン撤廃後初めてという記念碑的な1発攻勢になった。

 「来年も絶対にあのグローブを使おうと思っているんだ」。5月9日広島戦、母の日にちなんで金本からピンク色の打撃用手袋を借りて2発をマーク。“縁起もの”のグラブは現在も大事に保管。来年の5月9日にもタテジマを着て、同じ打撃用手袋でピンクパワーをさく裂させる考えだ。すっかりなじんだ甲子園が最高の居場所。この日のお立ち台でも「阪神ファンは日本で一番のファンです」。

 衝撃のゴールラッシュでチームは6月勝ち越し。ブラゼルは7回に4連発の期待がかかって「正直狙っていたけど」。フルスイングの結果はポトリと落ちる左前打だったが「まあヒットだったのでよしとしよう」。無邪気な笑顔に球団史に名前を刻んだ喜びがつまっていた。【益田一弘】

 [2010年6月30日11時52分

 紙面から]ソーシャルブックマーク