<阪神5-4広島>◇20日◇甲子園

 阪神が逆転サヨナラ勝ちで広島との延長の死闘を制した。2点を追う延長10回、先頭の代打林威助外野手(31)の中越え1号ソロで1点差に追い上げると、無死一塁から鳥谷敬内野手(29)が左越えサヨナラ11号2ランを放った。球団初の延長逆転サヨナラ本塁打でチームは4連勝を飾り、首位巨人との0・5ゲーム差を死守した。前半戦首位ターンに望みをつないだ。

 迷いはなかった。3球続けての外角勝負。鳥谷は狙い球を決めていた。上野の外角直球を逆らわずにこすり上げた。センターポールの旗が真横になびいていた。浜風に乗った打球は左へ流されながら左翼ポール際に飛び込んだ。大歓声を体中に浴びて、クールな男が両手を挙げてホームベースへ飛び込んだ。「相手も引っ張らせたくない。外をなんとかと思っていた。本当に苦しい試合だったので勝ててよかったです」と目を細めた。

 延長10回、広島に2点を勝ち越された。重苦しいムードを振り払ったのは先頭の代打林の一振りだった。「代打だし、自分が一番振れるタイミングで。2ストライクに追い込まれるとスイングが小さくなる」と、カウント0-1からの上野の外角球をバックスクリーンへ打ち込んだ。「正直、うれしい。とにかく塁に出ようと思った。センターへのホームランはなかなかないし、とりあえず抜けてくれ、と思っていた。まさか入るとは」。一気に追撃ムードが盛り上がった。

 続く代打関本の中前打で無死一塁となり、1番鳥谷の頭にはバントもよぎった。前日19日まで16打席無安打で、この日も4打数無安打だった。だが、真弓監督は「打て」のサインを出した。「調子は落としている感じはあるけど、あそこは信頼というか、何とかしてくれないとね」。得点圏打率3割3分7厘が示す勝負強さにかけた。「打てのサインだったので、つなぐ気持ちで打席に入りました。打った瞬間にいったと思った」。不振の1番は球団初の延長逆転サヨナラ本塁打で応えた。

 2日に第3子が生まれたが、おめでたい話でも、私情をグラウンドに持ち込まない。「子どもは関係ないですよ。チームが勝ってくれたら十分です」。素顔は愛車にアニメ「アンパンマン」のDVDを積む子煩悩なパパだ。家に帰れば笑顔があふれている。グラウンドでは見せないしわくちゃな顔が、この日の夜にはこぼれていた。

 真弓監督もドラマチックな勝利に興奮を隠せなかった。「すごい勝ち方やね。めったにない。まさかサヨナラとは思わなかった」。追走する巨人もサヨナラ勝ちで、首位奪取はお預けとなった。ただし、0・5ゲーム差は変わらない。21日のオールスター戦前の最後の一戦に勝てば、首位で折り返すチャンスを残している。鳥谷はお立ち台で「明日勝って、首位に立ったら最後まで守りたいと思います」と力強く約束した。【鎌田真一郎】

 [2010年7月21日8時44分

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