<阪神3-2中日>◇30日◇甲子園

 はやい、すごい、頼もしい!

 虎の守護神藤川球児投手(30)が、1点差の8回途中から登場。自己最速タイとなる156キロの「火の玉ストレート」でぐいぐい押し込み、中日打線をねじ伏せた。イニングをまたいでの登板となった藤川は8回裏に打席が回り、四球で4年ぶりに出塁するなど“大忙し”の1日を最後は笑顔で締めた。30度目の逆転で3連勝。貯金15とした。2位巨人とのゲーム差は1のままだが、暑さも吹き飛ぶ痛快な勝ちっぷりだ。

 グラブをたたいた。右手を強く握りしめた。あと1球コールから5球目。食らいつく小池を振り切ったのは、153キロの火の玉ストレートだった。藤川の代名詞ともいえる武器で終止符を打った。「大事な試合やったから。中日やし、こういう試合に勝ってよかった」。体中から噴き出す汗が止まらない。「また、明日です」。疲労と充実感が交錯する中、守護神は汗をぬぐった。

 出番は、いつもの9回ではなかった。8回2死一、二塁。目の前には竜の主砲ブランコがにらみを効かす。2球で追い込み、最後は153キロがうなった。1球もバットにかすらせない。「リミッターを外した?

 多少はね」。球宴ではオール直球で3者連続三振を奪った。限定の“球宴用フォーム”だったが、この夜は真剣勝負でさらにすごみが増した。9回、先頭和田の3球目。外角に突き刺さった直球は、自己最速タイの156キロを計測!

 4球目も156キロをマークした。「何でやろ」と首をかしげたが、守護神のプライドが体を突き動かした。

 誰よりも強い責任感が藤川という男の原動力になっている。30歳になった。相手を抑えることだけが仕事ではなくなった。尊敬する先輩として、岩瀬の背中を追いかける。「30代になってどうやって取り組んでいけばいいか、これからの僕にとって参考になる」。中日投手陣に若手が次々に出てくる理由は、偉大な左腕の影響力にある、と見ていた。

 だから自らもチームの大きな柱になる。13日巨人戦の延長で決勝弾を打たれた西村には「オレはもっとひどい打たれ方をしたことがある」と経験談で心のケアを施した。好投しても勝ち星が伸びない鶴には「お前はタイガースのエースになれる逸材だ。だから6回、7回の壁を越えないといけない」と1時間も語りかけた。

 この日は4年ぶりの「ハプニング」にも直面した。8回2死一塁から城島が盗塁を決めると、浅井が敬遠された。今季2度目の打席が回ってきたが、1度もバットを振ることはなかった。中日鈴木が4球ともストライクが入らず、06年シーズン以来となる出塁。イニングまたぎに、出塁と、いつもと違う環境下。それでも藤川の全26球に魂を見た。後半戦3連勝。巨人とは1ゲーム差で変わらず、3位中日は4ゲーム差とした。上位チームとの対戦は3カード続くが、頼もしい守護神がいれば、どんな苦難も乗り越えられる。【鎌田真一郎】

 [2010年7月31日10時59分

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