<広島6-10阪神>◇12日◇マツダスタジアム

 懐かしさすら覚える、華々しい桜の舞だ。どっしりした下半身から丸太のような両腕へ、全身の力が伝わる。桜井広大外野手(27)がコンパクトにバットを振り抜くと、打球は高々と夜空を舞った。

 桜井

 久しぶりに気持ちが良かった。ジョーさんの余韻で打つことができました。

 城島の逆転3ランで1点リードした直後。カウント0-2となり「真っすぐ1本に絞りました」。真ん中に投げ込まれたスタルツの136キロを打ち抜いた。8号ソロは6月6日ソフトバンク戦(甲子園)以来、67日ぶりの1発。苦しみが報われた瞬間だった。

 7月11日、不振で1軍登録を抹消された。右ひじの違和感も抱え、患部のケアを施しながら復活ロードを歩み出した。炎天下の鳴尾浜でバットを振る毎日。父雅四郎さんは珍しく息子にメールを入れた。「頑張れよ」-。

 7月19日。両親は1度だけ鳴尾浜を訪れた。7月19日の広島戦を観戦するためだった。大勢の観客が訪れ、入場規制がかけられた。やむを得ず、父雅四郎さんだけが球場観戦。母ふじ子さんは車の中で待機するしかなかった。息子には観戦を告げず、内緒にしていた。気を使わせたくなかった。この1戦で桜井は1発5打点の大爆発。両親はそっと胸をなで下ろし、滋賀県内の自宅へ戻った。

 家族だけではない。誰もが復活を待ち望んだ。下半身主導で力を抜いたフォームを体に染みつかせ、調子を取り戻した。10日に1軍復帰すると、早速2戦連続のマルチ安打だ。もちろん、満足はしていない。「ホッとはしていません。ホームランだけでなく、チームの勝利に貢献できるようにやっていきたい」。台風が過ぎ去り、いよいよ桜前線の到来だ。【佐井陽介】

 [2010年8月13日10時30分

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