<日本シリーズ:中日12-1ロッテ>◇第2戦◇10月31日◇ナゴヤドーム

 まさに予告通りの大爆発だ。中日落合博満監督(56)が“オレ流マジック”で打線をよみがえらせた。試合前のスタメン発表、打線は6安打で敗れた前夜とは様変わりしていた。象徴的だったのは6番に野本、8番にルーキー大島洋平外野手(24)と若手左打者2人をシリーズ初めて先発起用したこと。しかも、相手は左腕マーフィー。この、一見セオリーを無視した起用がズバリと当たった。

 落合監督の狙いがいきなり当たった。初回2点を先制して、なお2死満塁。ここで8番大島はマーフィーの高めの直球をたたいた。打球は左翼線を破る2点二塁打。「とにかくランナーを返すことだけに集中していました」。新人として史上初となるシリーズ初打席での2点適時打。試合の主導権を完全に握った。

 落合監督は試合後、打線変更をこう説明した。「7つしかないから状態が上がるのを待っていられない。確かに野球選手は結果を求められるんだけど、それにつぶされたらグラウンドで表現はできない」。この日、ロッテの先発予想は右の渡辺俊、左のマーフィーと割れていた。中日側は右のペンの可能性も考慮していたが、マーフィーが左打者の被打率が高いことはスコアラーから報告を受けていた。前日に3三振した藤井をベンチから外し、どちらがきてもいいように2人の左打者を送り込んだ。7試合の短期決戦。両軍を行ったり来たりする勝負の波を待っている猶予はない。大胆な選手変更で強引に流れを引き寄せた。

 「体が反応してくれた。気持ちで打ちました。シリーズの雰囲気はいいですね」。大島は大舞台での活躍に顔を紅潮させた。実は前日の試合後、最後まで室内打撃練習場でバットを振っていた大島がこう漏らした。「清田が打ちましたし。僕もいつチャンスが来てもいいように、準備だけはしておきたいんで…」。第1戦で新人では巨人長嶋茂雄以来となるシリーズ初戦本塁打で一躍脚光を浴びた清田は大学時代からのライバルだ。長打力が売りの東洋大の3番清田、俊足巧打の駒大の1番大島。タイプこそ違うが、両チームは4年の春、秋と続けて優勝決定戦で激突。そんな好敵手が大舞台で活躍するのを目の当たりにした。悔しかった。熱い思いで準備していた選手と、それを使ったベンチ。がっちりとかみ合った歯車が勝利を演出した。

 「このオーダーが続くかどうかは明日の練習を見てからでないとわからない。ただ、ここで2つ負けなかったのは大きい」。短期決戦の極意とも言える大胆な選手起用を見せたオレ流指揮官。その視線は早くも第3戦へと目を向けていた。【鈴木忠平】

 [2010年11月1日11時20分

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