<オープン戦:中日6-7オリックス>◇6日◇ナゴヤドーム

 中日荒木雅博内野手(33)が4年ぶりの盗塁王奪回へ動きだした。オリックスとのオープン戦(ナゴヤドーム)で今季初盗塁。昨季リーグ最少の53盗塁に終わった落合竜にとって荒木の「足」は重要な攻撃の起爆剤だ。かつてのライバル元阪神赤星憲広氏(34)との“約束”を果たすためにも、荒木は走る。

 荒木の両足が力強く地面を蹴った。5回2死からヒットで出塁すると、すかさず、オリックス先発寺原に仕掛けた。27・43メートルの塁間を加速していく。あとは捕手日高の肩との勝負。カバーに入った遊撃手の位置を確認するとベース右側へ滑った。送球がそれたため悠々と二塁を陥れた。

 「スタートが完全に遅れた。(送球がそれなくても)セーフはセーフだと思うけど…。まあ、きょうは走れただけでよかった」

 苦笑いで振り返ったが、それでもアウトにならないのは通算292盗塁を誇る荒木ならではの業だ。5日前、福岡ヤフードームでもスタートしたが、この時は井端がヒッティングしたため盗塁にはならず。この日が晴れて、2011年の「初盗塁」となった。

 荒木は今季の大きなテーマの1つに盗塁を挙げている。昨季は開幕前に左足を故障した影響で20盗塁と、7年ぶりに30盗塁に満たなかった。チームも優勝こそしたが、盗塁数はリーグ最少の53個と、得点力不足の遠因となった。その反省から荒木は今年、自主トレから時間をかけて下半身をつくってきた。「去年のようなことがないように、走ることを大事にしている。今年は盗塁を増やす」。キャンプ前から盗塁増を口にし、ひそかに07年以来4年ぶりの盗塁王奪回を狙っている。

 果たすべき“約束”も荒木の背中を押す。09年オフ。長年、盗塁王を争った阪神赤星が引退した。「お疲れさまでした。寂しいですけど、体を大事にしてください」とメールすると「ありがとう。お前は頑張ってくれ」と返信があった。エールに込められた赤星の真意をくんだ荒木はあえて「50盗塁で盗塁王」と宣言した。だが、昨年は実現することができなかった。

 「今年はもうちょっと走れると思う。でも、きょうのスピードではどうかなあ。オープン戦で何回か走って上げていくしかない」

 初盗塁には不満も多いようだが、森野の適時打が生まれた。バットでも2安打を放ち、その表情は明るい。打線はグスマン加入で破壊力が増した。そこに荒木の足がプラスされれば、さらに強力になる。切り込み隊長の快足が新打線への期待をさらに膨らませる。【鈴木忠平】