<オープン戦:中日1-3広島>◇17日◇ナゴヤドーム
打球はいつもより静かなスタンドに弾んだ。中日谷繁元信捕手(40)が1点を追う6回、広島先発バリントンから左翼へ同点ソロを放った。「出合い頭が出た。シーズン中にとっておきたいような出合い頭だった」。球団として震災後、初めて開催されたオープン戦。鳴り物も、応援歌もない異様な雰囲気の中、左袖に喪章をつけた谷繁は黙々とベースを1周した。
「3月25日開幕」の一報が届いたのはナイターが始まる直前だった。今原球団代表補佐が実行委員会での決定を選手たちに知らせた。
谷繁
それは仕方ない。僕がやりたくないと言っても、やらないわけにはいかない。(選手)全員が同じ気持ちではないかもしれないけど、やると決まった以上はきちんとしたものをやらないと。
震災直後には真っ先に個人として200万円の義援金を送った。この日も試合前には入場口に立ちファンに募金を呼びかけた。被災地を思うと、いても立ってもいられない。それでもグラウンドでは1万1549人のファンにプロのプレーを見せた。
「元気を出してもらうとか、そういうこと以上に僕たちは今、できることをやっていかないといけない。僕だったら、ちゃんとした送球ができず盗塁されたこと。きょう投げた2人だったら、今まで、どうやって打者を抑えてきたか考えていないこと」。
本塁打以上に2盗塁を許したことを胸に刻んだ。先発岩田、2番手川井の2投手を試合中に叱咤(しった)する場面もあった。賛否渦巻く中での3・25開幕-。被災地への思いを抱えながら、プロの仕事に徹する谷繁の姿が印象的だった。【鈴木忠平】



