中日落合博満監督(57)が“本番モード”に突入した。7日に行われたヤクルトとの練習試合(ナゴヤドーム)で「故意落球」の判定を巡り、審判団に抗議した。観客のいない練習試合では異例の行動だが、納得できなければとことん議論するのが落合流。球団史上初の連覇を目指すシーズンの開幕まであと4日。指揮官のボルテージも上がってきた。

 無観客の練習試合では異例の行動だった。落合監督はジャンパーを着たままベンチを出ると、ゆっくり審判のもとへと歩いた。スタンドにはだれもいない。静寂の中で抗議が始まった。

 問題のシーンは8回だった。1死一、二塁から川端のライナーが遊撃へ飛んだ。荒木はこれを捕球できず、拾ったボールを二塁井端へ送球。ここで敷田二塁塁審が試合を止めた。

 「故意落球!」。

 敷田塁審は打者走者にアウトを宣告し、走者をそれぞれ塁に戻して試合を再開しようとした。そこで、落合監督が抗議に出た。

 敷田塁審は「ダブルプレーを取れるケースだったのでグラブに当てて落としたと判断しました。落合監督からは『グラブが閉じていないじゃないか。故意じゃない』とアピールがありました」と説明。さらに「『練習試合だから聞かせてくれよ』と。年に1度あるかないかのプレーで我々も勉強になりました」と、抗議というより説明を求められたことを明かした。

 この日のようなケースで野手が飛球やライナーを故意に落とした場合、打者はアウトでボールデッドとなる。敷田塁審は「故意」と判断し、落合監督は「過失」と見た。これをめぐって約5分間、4審判と落合監督が議論した。

 「走者と重なって見づらかった。あの短時間でわざと落とせたら、僕はすごい選手ですよ。故意落球じゃなく、マジ落球です」。

 試合後、荒木は苦笑いで「過失」と認めた。ただ落合監督にとっては本番に向けて少しでも疑問の余地をなくし、審判団に考えさせたことが収穫だ。激戦のセ・リーグを制した昨季は2度も退場になった。「どう見ても、おかしいという時は引き下がるわけにはいかない」。納得できない判定には決して引き下がらない。野球に関して一切妥協を許さないポリシーを今季も貫く。

 開幕前、最後の実戦は4-4の引き分けで終わった。チェン、山井など先発陣に故障が相次いだが、中田賢、ネルソン、朝倉、小笠原などが結果を出した。大砲グスマンを5番に置いた新打線も機能しつつある。何より、指揮官も臨戦態勢にあることを示した。球団初の連覇へ。オレ竜はいつでも開幕できる。【鈴木忠平】