<楽天4-6巨人>◇18日◇Kスタ宮城
また巨人に新しいヒーローが誕生した。08年ドラフト1位の大田泰示内野手(20)が、プロ初安打で勝負を決めた。4-4の延長10回表1死満塁から中前打を放った。9回に代走に出た際はタッチアップで本塁憤死の場面もあったが、最後に勝負を決めた。前日の円谷に続き、連日のニューヒーローが飛び出し、チームは3連勝で貯金を1とした。
打球音はガツーンではなくて、コツンだった。10回、1死満塁。大田の打球は二塁後方のヒットゾーンにポトリと落ちた。豪快ではない。楽天サンチェスの変化球に食らいついた。3年目でプロ初ヒットだ。「何を打ったか分からない」と、無我夢中だった。一塁ベース上でクシャッと、初々しい笑顔を見せた。「頭の中では整理して打席に入ったつもりです。ああいう形になりましたけど、気持ちが出てヒットになったんだと思います」。泥臭く、気迫いっぱいの一打だった。
失敗もあった。代走で出た9回1死満塁からは浅い飛球でタッチアップし本塁で憤死。決勝打の直前にはボール球に手を出した。「ボール球を振って頭がパニックになった」。すべてが、チャレンジ精神たっぷりの若々しいプレーだった。
08年ドラフト1位。松井秀喜(アスレチックス)の後継者として背番号「55」を背負う。大打者の背番号は重く、ジレンマの連続だった。新人だった09年6月21日のプロ初打席は3球三振。豪快な空振り。長打力をアピールしたい気持ちが空回りした。
それから2年間1軍出場はわずか5試合。1月に成人式を迎えた大田は「期待されてるのは分かってるんですけど、今年ダメだったら自信ないんですよ…」と、本音をのぞかせたこともあった。
勝負の今季に臨むにあたり、豪快さへのこだわりは捨てた。練習では正確な打撃を心掛けた。走塁も意識し、イースタン・リーグでチームトップとなる14盗塁をマーク。前日17日も、この日も代走で出場機会を得た。「試合に出られればこだわりはないですよ。緊張感のある場面で出られれば、いい経験にもなる」。プロで生き残ろうという執念だった。この日の安打も、その執念が呼んだといっていい。
この日の決勝打は、ポテン安打だった。しかし、長打が魅力であることに変わりはない。試合前の打撃練習を見た敵将星野監督をして「強く振れるのはいい。若いのでは(日本ハムの)中田と大田だ」と言わしめた。本人も「打撃が売りなんで、早くホームランを打ちたいです」と口にし、記念ボールについても「初ホームランは親にあげたいけど、初ヒットは自分で持っときます」とこだわりをのぞかせた。泥臭い安打1本から始まった大田泰示のプロ人生は、この先大きく大きく広がっていく。【斎藤庸裕】



