<オールスターゲーム:全パ4-3全セ>◇第2戦◇23日◇QVCマリン

 オール直球勝負で逆襲準備OKだ!

 中日の大黒柱吉見一起投手(26)が球宴第2戦に登板し、2回を1失点。全14球ストレート勝負を挑み、夢舞台を満喫した。球宴直前に出場選手登録を抹消されて心配されていたが、後半戦に向けて「大丈夫です」と力強く宣言。最短で27日阪神戦(甲子園)の復帰が可能で、後半戦最初の上位対決に照準を合わせた。

 打球の行方など気にしなかった。吉見は野球少年のように、力いっぱい白球を投げ込むことだけに没頭した。4回から3番手でマウンドに上がると、いきなり先頭の西武中村に136キロの直球をバックスクリーンへ運ばれた。

 「館山さんに(中村に)『おかわりされてこい』と言われてたんですよ。やっぱり、そんな話をするもんじゃないですね(笑い)」

 MVPを決定づける2打席連続弾を許したが、楽しそうだった。笑顔の理由はオール直球勝負にある。西武中村、日本ハム糸井には痛打された。楽天山崎、日本ハム中田にはバットの芯を外した。2回で2安打1失点という結果はどうでもよかった。

 「打たれる、打たれないは別にして、僕なんかが真っすぐで勝負できるのはシーズン中にはないこと。本当に楽しかったです」

 シーズン中は数センチ単位の制球力で勝負する男が、2イニング、14球の間だけ自分のロマンを追いかけた。オールスターのマウンドという選ばれし者の特権を満喫した。その充実感は、新たな戦いへの原動力になる。試合後、終始笑顔だった吉見が後半戦の話になると少しだけ表情を引き締めた。

 「体は大丈夫です。きょうは1球も納得いく球はなかったですが、楽しかった。また新たな気持ちで後半戦に入っていけます」

 前半戦は7勝2敗と先発陣を引っ張ったが、17日に登録を抹消された。首脳陣は、巨人戦が組まれていた前半戦最終登板を飛ばし、疲労回復をはかった模様だ。球宴での直球“調整”で、最短復帰の27日阪神戦(甲子園)もくっきり見えた。ゲーム差なしで迎える竜虎決戦が復帰戦となりそうだ。

 首位ヤクルトと8ゲーム差の崖っぷちにいる落合竜。この日の吉見の投げっぷりが、球団史上初の連覇につながる大逆襲の期待を抱かせた。【鈴木忠平】