<阪神9-1中日>◇27日◇甲子園

 虎党のみなさん、おめでとうございます。借金11を背負っていた阪神が、83日ぶりに勝率を5割に戻しました。とどめを刺したのは3年目の上本博紀内野手(25)。前夜の4年目森田のプロ初打席弾に続けとばかりに、会心のグランドスラムです。でも、大事なのはここから。若虎がつけた勢いをそのままに、3連勝といきましょう!

 連夜のサプライズが球場を揺るがした。5回裏2死満塁。上本が初球の内角ストレートを強振した。「積極的に行こうと思った」。打球は左翼スタンドに放物線を描く。プロ通算2号が中日にとどめを刺すグランドスラム。「あんまり打ったことなかったので、(手応えは)分からなかった。何があるか、分からないので走ろうと思った」。小兵は少し急ぎ足で、4つのベースを踏んだ。

 5月5日を最後に、借金生活は長く続いた。最大で「11」まで膨らみ、最下位の屈辱も味わった。そんな長く辛い日々に終止符を打ったのは、若い力だった。前夜は21歳の森田が球団史上初のプロ初打席初本塁打を代打で決めた。この日のヒーロー上本は、25歳。「別に森田じゃなく、チームが勝てばいい。チームが勝てば、個人に関しては。ほんと、いつも通りです」。前夜からの流れを語れるほど余裕はない。チャンスをもらった若手は必死だ。この必死さが、チームを押し上げる。

 大胆起用が連夜のサプライズを生んだ。この日はチェンに対して相性の悪いブラゼルをスタメンから外した。関本を一塁に回し、上本を二塁で使った。小兵のせいか守備的なイメージがあるが、真弓監督は実は打撃面を高く買っていた。昨年は1軍にプロ入り初めて昇格させた。「打撃に関しては1軍レベル。守備力が上がれば、おもしろい存在になる」。そう話したこともあった。秋から春にかけて、1軍キャンプに帯同。守備の技術は向上し、意外性のある打撃を発揮する下地はできた。

 後半戦2連勝で、勝率5割。宿敵中日を連破して、7月の勝ち越しも決定。若手のがんばりで、選手層も厚みが増す。「昨日といい、今日といい、若い選手がしっかりと仕事をしている。勢いが出てくる。いいですよね。連勝となると、日替わりヒーローが出てこないとできない」。真弓監督はご満悦だ。

 そのとき、グラウンドでは上本がお立ち台で叫んでいた。「まだまだ先が長いし、目の前のひとつをとっていきたい。チケットが売れ残ってるみたいなんで、たくさん買って、明日も応援にきてください」。さあ、貯金生活だ!

 待ってろ、ヤクルト!【田口真一郎】