<中日2-1ヤクルト>◇4日◇ナゴヤドーム

 神様、仏様、ソト様~!

 落合竜が格安助っ人エンジェルベルト・ソト投手(28)の好投で連敗を3で止めた。首位ヤクルト打線を7回6安打1失点に料理。先発転向後、巨人戦、阪神戦に続いて3度目の連敗ストッパーとなり、3連勝を飾った。引き分け以下で自力優勝消滅という危機を救った左腕はまさに救世主だ。

 ソトがほえた。顔を真っ赤にして叫んだ。勝ち越した直後の7回、2死から投手館山にヒットを許した。女房役小田がマウンドにやってきた。

 「絶対に気を抜くな」

 青木にはそこまで3安打されていたが、最後の力を振り絞った。早めに追い込み、最後は狙い通り、ボールゾーンに沈む変化球を振らせた。終盤でも衰えない制球力とキレで首位打者のバットにかすらせず、会心のガッツポーズだ。

 「ファン、家族の前で、ナゴヤドームで勝てて本当にうれしい。チャンスをもらって感謝しています」

 本拠地初先発で初勝利。お立ち台のソトはいつもの謙虚で温厚な男に戻っていた。それでも、先発に転向した7月18日巨人戦(東京ドーム)から、28日阪神戦(甲子園)、そして、この日とすべてチームの連敗を止めての3連勝。救世主「ソト様」とあがめられるにふさわしい活躍だ。

 極限の緊張状態となる先発直前のブルペン、ソトは携帯電話を取り出す。受話器から聞こえるのは愛するナタリア夫人(28)、愛娘ニコルちゃん(3)の声だ。「家族の声で緊張がほぐれるんだ」。先発の特権でもある上がり(ベンチ入りを外れる)日にはホテルの部屋で映画「Shall

 We

 Dance?」を鑑賞してリラックス。そんな温厚な男が、マウンドでは鬼神に変身する。

 この日もピンチをしのぐたびに雄たけびを上げた。感情をむき出しにするそのスタイルは気弱な自分を鼓舞するためだ。米国マイナー時代、同僚にピンチで弱気になる欠点を指摘された。「根性を見せろ」-。以来、気迫を表に出すことで自分を奮い立たせてきた。

 年俸7万ドル(約570万円)の格安助っ人が常勝軍団を転落から救った。「ベネズエラで日本に行くチャンスをもらった。テスト生から契約してもらった。これからが大事。チャンスを生かせるようにしたい」。ちょっぴり気弱だが、何より家族を愛する男のひたむきなサクセス・ロード。勝利の女神がほほ笑むのもうなずける。【鈴木忠平】