<巨人3-3阪神>◇25日◇東京ドーム

 これぞ「ザ・キャッチ」だ。巨人高橋由伸外野手(36)が超美技を披露した。5回、1点差に迫られ、なお2死一、二塁。右中間を襲った阪神新井貴のライナーを懸命に追い、最後はダイビングキャッチ。抜けていれば同点もしくは逆転のピンチを一瞬にして救った。打っても先制11号ソロ含む、チーム全得点の3点を1人でたたき出した。延長10回引き分けに終わったが、逆転Vに向けてヨシノブが、身をもって「ネバー・ギブアップ」の精神を示した。

 高橋由が宙を舞った。1点差に迫られた5回2死一、二塁。新井貴の打球は、弾丸ライナーとなって右中間へ。巨人ファンの誰もが落胆を覚悟し、阪神ファンの誰もが歓喜を悟った。だが、ライト高橋由は無心で球を追っていた。「自然に。球がそこにあったので」とダイビングし、思い切り全身を伸ばして捕球。たたきつけられるように着地すると、ボールを落とさないようすぐに長野に投げてスーパープレーを決めた。

 抜けていれば2者生還で、逆転されていたかもしれない。リードしながら先発小野を5回途中であきらめ、継投勝負に出た直後だっただけに、ダメージも大きかったはずだ。だからこそ、大西外野守備走塁コーチは「2打点の価値がある」と絶賛。観客は総立ちで、ベンチも総出で出迎えた。

 腰に持病を抱える。4月にはフェンス直撃で左肋骨(ろっこつ)を折った。それでもプレーで恐れは見せない。「みんな同じなんだから」とさらりと話し、コンディションは言い訳にしない。だが実際は、準備に手抜きも抜かりもない。猛暑を乗り切るべく、練習前に体を動かす時ですら「(水分補給で)飲まないとだめ。でも飲み過ぎると重くなる。難しいよね」と、ポケットにペットボトルを入れていた。

 また、今季からスパイクの素材をメッシュ地に、ミドルカットからローカットに変更もして軽量化を図った。細部にまでこだわった体は、守備では羽が生えたかのように宙を舞い、打撃ではしなやかなスイングで、先制11号ソロに2点適時打と全3打点をたたきだした。

 試合は8回に追いつかれ、延長10回で引き分けた。「由伸1人だったね。由伸がいたから(負けずに)引き分けに終わった気がするね」と原監督。小笠原がこの日に戦線離脱し、楽観視できるチーム状況ではない。そんな中、高橋由の静かなるリーダーシップが、激しいプレーとなって表れた。勝てなかったが、負けを防いだ。巨人の今後を左右する、美しいプレーだった。【浜本卓也】