<巨人6-1ヤクルト>◇20日◇東京ドーム
絞り出した言葉は喜びに満ちていた。巨人沢村拓一投手(23)は試合後のお立ち台で言った。今の気持ちを聞かれ「あの~」と一呼吸。「本当にうれしいです」。素直に表現した。1勝4敗と分が悪かったヤクルト。それでも自分の右腕に託された最終戦。重圧と闘いながら、1失点に封じた。8回1死から青木に右前打を浴び、軸足の右足がつってマウンドを降りたが、ベンチへ下がるときの球場の歓声と拍手はひときわ大きかった。
目の前の試合に集中した。2日のヤクルト戦から18イニング連続無失点。「記録のことは言わないでください」。3回に1失点し、20イニングで途切れたが、勝てればよかった。登板前日には、「(成績を)振り返っても仕方ないですから」と話し、前を向いて挑んだ一戦。天敵の青木と田中に2安打ずつ浴びたが「後続を抑えればいいと思った」。クリーンアップを8打数1安打に抑え「最低限の仕事はできたと思います」と、堂々と立ち向かった。
ここまで11敗。負けが込むことで考え方も変えてきた。プロ最短KO(1回2/3で4失点)を食らった8月5日の広島戦後、「勝ちたい、勝ちたいばかりではダメ」と自らを責め、「まずは打者を打ち取ること。シンプルに考えないといけない」と基本に立ち返った。結果が全てのプロの世界。「勝てなかった経験があってよかったと思えるようにしたい。難がない人生なんてないですから」と、登板24試合の経験を糧にした。
両リーグ新人トップの8勝目にも「目先のタイトルより、いかにチームに貢献できるかです」と、力強く話した。原監督は「非常に丁寧に、慎之助(阿部)がリードしていたと思います。本人もややイケイケの部分があるが、手綱という部分では、引きながら慎之助がうまい具合に、彼の力を引き出した」と目を細めた。CSで再び戦う可能性の高い相手に快勝。沢村は言った。「いつかジャイアンツを背負っていかないといけないと思ってるんで」。この勝利を決して無駄にはしない。【斎藤庸裕】



