<巨人7-2中日>◇14日◇東京ドーム

 2位に手が届きそうなところまできた。巨人が優勝目前の中日に快勝して3連勝、2位ヤクルトとのゲーム差は1・5に縮まった。巨人先発沢村拓一投手(23)が、プロ初の無四球で2失点完投。中日の連勝を5で止め、11勝目を挙げた。2回には6安打を集中して5点を奪うなど投打がかみ合い、クライマックスシリーズ(CS)と日本シリーズに向けて視界が開けてきた。

 ハイタッチの輪の中でも沢村に笑顔はなかった。お立ち台では表情を変えず、「勝ったのはうれしいですけど、悔しいですね。反省すべき点が多いです」。9回2失点という結果に“中日キラー”は満足はしていない。ポストシーズンで今度こそねじ伏せる-。勝利の儀式での形相は、そう雄弁に語っていた。

 巨人が負けか引き分け、かつヤクルトが負ければ中日のリーグ優勝が決まる試合だった。「東京ドームでは(胴上げは)させない」と、固い決意でマウンドに上がった。首位を走る中日に9月8日(10回無失点)から3戦負けなしの2連勝。完全に封じ込んでいただけに、1回の失点と最終回に森野に1発を浴びたことが、悔しかった。「ストライクにする球、ボールにする球を、意識しても投げきれなかった」。1回に1番荒木に打たれた初球は高めの甘い直球。先制点につながった。森野のソロも真ん中の直球。11勝11敗のタイに戻したが、やるべきことが残った。

 沢村の負けが込んだとき原監督はこう言っていた。「あいつは背伸びしている。背伸びって、景色は2、3センチの違いしかない。だけど、わずか2センチのつま先立ちは、景色の変化の割に疲れちゃうんだよね」。勝たなければいけないという重荷を背負っていた。だが最近の沢村は違う。「勝ちたい、勝ちたいとは思わないんです。負けなければいいと思ったら、少し楽になりました」と言う。「防御率、四死球を意識してやってきた結果だと思います」。欲を捨て、自身5連勝につなげた。

 2位ヤクルトと1・5ゲーム差に押し上げた。22日の最終戦では、中継ぎ待機の可能性も残す。200イニング投球回まであと3回1/3。加えて、新人で防御率1点台なら61年の中日権藤以来50年ぶりだ。「自分にとってもモチベーションになる」と話すように、記録ラッシュの楽しみも残した。原監督も「大量点に気を緩めることなく、しっかり投げてくれた。日々成長し、なんの疑いもなく自分を出そうとしている。素晴らしい」と、今では等身大の沢村を評価する。「あと3試合残ってるので、いけと言われたところで結果を残せるようにしたい」と沢村。まだまだ戦い続ける。【斎藤庸裕】