転んでも、ただでは起きなかった。インフルエンザに感染し、宿舎の自室で療養していたDeNA中畑清監督(58)が、キャンプ第2クール初日の7日、現場に復帰した。あいにくの雨だったが、病み上がりとは思えない元気の良さで動き回り、キヨシ節も“絶口調”。4日間の“隔離”生活では、休養するだけでなくチーム浮上に欠かせない「我慢」の大変さを学んだという。練習開始前には、コーチ、ナインの前でしっかり謝罪。あらためて決意表明した熱い監督が、グラウンドに帰ってきた。

 人生初のインフルエンザ感染で、中畑監督は2つのことを学んだ。1つは低迷するチームを率いる者として必要不可欠なものだった。「学んだのは我慢です。夕陽のガンマン」。冗談交じりに話したが、その重要性を身を持って痛感した。2日夕方の発症発覚後、生活範囲はホテルの自室のみ。「4日間、部屋から1歩も出ない人生は苦痛だぞ」と、“隔離”生活のつらさを振り返った。

 大好きな演歌を口ずさむ気にもなれず、ストレスの解消は1日3回の食事を運ぶ管理栄養士と広報担当との会話。そんな想像もしなかった生活を支えたのは、ベッドのそばに常に置いていたユニホームと、12階の窓から見つめた眼下の球場で汗を流す選手の姿だった。

 4年連続最下位からの浮上が必須の今シーズン。ライバルチームとの戦力差は、監督自身も認める。厳しい戦いを勝ち抜くためには、潜在能力のある若手の成長が絶対条件。そのためには実戦で起用し続ける「忍耐」「我慢」が欠かせない。中畑監督はキャンプイン早々、自らの体で思い知ることができた。

 もう1つも、必要不可欠な学習だった。「選手の名前、全部覚えました。だてに4日間隔離されてません」。雨天のため室内練習場で行われた練習を見守りながら、背番号から牛田や加賀の名前を得意げに当ててみせた。指揮官として当然といえば当然だが、キャンプ初日の1日には全員を覚えておらず、「明日までに覚える」と宣言。その翌日にインフルエンザが発覚したが、休養期間中にしっかりと宿題を終わらせていた。

 つらさが大きかった分、グラウンドに戻ってきたことがうれしくて仕方ない。「ただいま~、お待たせ~」と笑顔全開で登場。練習前の円陣では「自らを祝う出陣式だよ」と、威勢のいい掛け声で一本締めを行った。口だけでなく体も元気いっぱい。友利投手コーチから、病み上がりのランニングを戒められる場面もあったが、この日からの新外国人入団テストでは、ファーストミットを手に一塁に入り、自ら送球をチェック。「ユニホームを着て、初めて自分の世界。やっぱり俺はこの世界にいないといけないな」。

 宿舎からの出発前に行われた全体ミーティングでは「残してはいけない汚点を残した」と、離脱をしっかり謝罪した。そして「今日からサバイバル」と第2クールから厳しくなる練習への覚悟を選手に求めた。「苦しい時を乗り越えた先には、充実感がある。そういう思いをしてもらいたい」。自らの悔しさを教訓とした熱い監督が、力強さを増して、宜野湾に帰ってきた。【佐竹実】

 ◆中畑監督謝罪あいさつ要旨

 みなさんホントにしばらくでした。みんなには、謝らなければいけないと思います。ほんとに悪かった。でも、いろんなことを考えた。そして、いろんなことが見えた。高い位置(ホテルの部屋)から見てて、良い練習はしていたと思う。

 ただ、他のチームも同じように、それ以上のことをやってるってことを頭の中に置いておいてほしい。俺たち、歴史のスタートの中にいる。いい歴史を残そうよ。いい足跡を残そうよ。

 そしてみんな一緒に、いい1年だったなと思えるような、野球をやろうよ。大いに期待してます。

 ◆この日のキヨシ7:00

 朝食「体調は万全よ。キヨシびんびん物語だな」9:20

 全体ミーティングで、謝罪と決意表明10:13

 嘉手納到着10:40

 円陣で一本締め11:05

 1人でランニング開始も、友利投手コーチに止められ「小じゅうとみたいだな」12:28

 宜野湾に移動13:15

 入団テストを受ける外国人3選手のノック見守る。途中自ら一塁に入って送球を捕球「ファーストタイムはグッド」13:20

 昼食15:11

 スタッフミーティング16:07

 球場を後に。報道陣へ「風邪ひくなよ!」16:14

 ホテル着