プロ2年目の巨人宮国椋丞(りょうすけ)投手(19)が9日、今キャンプで初めてフリー打撃に登板した。小笠原、坂本を相手に50球を投げ、バットの芯で捉えられたのはわずか3球だった。闘争心を前に出した投球で坂本からは2球連続の見逃しストライク。小笠原からは空振りを、いずれも外角直球で取った。オープン戦デビューは19日の阪神戦(沖縄セルラー那覇)に内定。地元・沖縄での凱旋(がいせん)登板をステップに、2年目右腕が開幕ローテ入りまで突き抜ける。

 アウトローに美しいラインが出た。宮国が坂本に対した23球目に審判がグッと拳を突いた。好打者の打撃練習では珍しい見逃しストライク。24球目も同じラインでリプレーしてみせた。「キレも角度もあって手が出なかった。僕も頑張らないと」と坂本を刺激するには十分な直球だった。

 「宮国椋丞」名刺代わりの50球。原監督にも「メカニックの上では、沢村より上。よくできている」としっかり届いた。1軍で最も細身、185センチ、76キロの19歳。教本に掲載されそうな右のオーバーハンド。優れている点は何なのか。数字が雄弁に語っていた。

 軸足に真っすぐ、たっぷりと体重を乗せるのが最大の長所だ。この日、左足を上げ、着地するまでの平均タイムは1・92秒。楽天田中の1・84秒と比較すれば明らかで、他投手に比べ圧倒的に長い。長所はまだある。左足が着地する瞬間、捕手からスパイクの歯が見える。軸足のパワーを受け止めてから、ボールに伝える。だから低めの直球が失速しない。「(左足首を)捻挫したからこういう使い方をしているわけではありません。自分のフォームです」と極意を明かした。

 投げ終わったら人垣に囲まれ面食らった。宮国は小さな声で、でもハッキリ言った。「今日のようにバンバン遠慮しないで投げたい」。2年目の自分にとってアピールの場と理解していた。

 同じ境遇を経てのし上がった先輩が背中を押してくれた。練習休日の6日、東野が夕食に誘ってくれた。もつ鍋をつつきながら宮国に説いた。

 東野

 リョウスケ、チャンスを逃さないでいこう。巨人の投手層はハンパない。1回逃したら次は数年回ってこない。そのくらいの覚悟でいこう。オレは昔、紅白戦、オープン戦を防御率0・00でいった。でも開幕ローテに残れなかった。打撃投手でも遠慮するな。全部アピール、抑えにいこう。

 宮国は崩した足を正座に整え聞き入り、「分かりました」とクリクリの目を見開いた。この日の朝も「自分の投球をします」と誓って、看板2人に対していた。原監督の「負けるなよっ!」の心配りで始まったが、取り越し苦労に終わった。

 この上ない結果を出した以上、開幕ローテ争いのレールに乗せる。沖縄に乗り込む19日、阪神とのオープン戦に1イニング登板。中6日の王道調整で、26日のロッテ戦に初先発する。「今日、やりたいことはできました。でもボールのスピンがまだまだです。地元だし、沖縄で投げさせてもらえるなら頑張ります」と結んだ。カット軌道の直球が散見されたのが自分で納得できない。美しいスピンと比例して、宮国は軽やかにのし上がっていく。【宮下敬至】

 ★巨人先発ローテーション争い

 6人体制でシーズンを戦う。内海、杉内の左コンビと、沢村、ホールトンの右コンビはローテーションの絶対的な軸。残りの2人を他の投手が奪い合う。現時点の候補は昨年の開幕投手・東野、ゴンザレス、そして宮国。ただ黄金時代再来のためには、若い選手の台頭が欠かせない。次代を背負う選手という位置付けで、宮国は「6番目の投手」の期待がかかる。