<オープン戦:巨人1-0阪神>◇19日◇沖縄セルラー那覇

 凱旋(がいせん)登板で鮮烈デビューを飾った。巨人宮国椋丞(りょうすけ)投手(19)が1軍初先発。最速139キロながら3回を無安打、無失点のパーフェクト投球を披露し“プロ初勝利”を挙げた。金本には3球勝負でボテボテの投ゴロ、城島からは空振り三振を奪うなど主力級打者にも物おじすることなく立ち向かった。2年目右腕が沖縄のファンの前で「信念」を貫く姿を体現。開幕ローテ入りへまた1歩前進した。

 超満員の「島人(しまんちゅ=沖縄の人)」が見守るスタジアムで宮国がピンと背筋を伸ばした。マウンドに向かってベンチから飛び出す。張り詰める緊張感。甘いマスクをこわばらせたのが合図だった。先頭平野に初球は137キロ直球を外角中央に投げ込んだ。フルカウントから134キロ内角直球で空振り三振。一息を吐き、勢いそのままに初回を3人で切り抜けた。

 「次から次にいいバッターが出てきて抑えられるか不安だった」。言葉とは裏腹に強気の投球が続く。2回の先頭打者は金本。24歳上の強打者に2ストライクから3球勝負を挑んだ。フォークを打たせ投ゴロ。城島は外角低め136キロの直球で空振り三振を奪う。圧巻は予定登板最終回の3回、1死後の清水への投球だ。ここでも1ボール2ストライクから最後はタイミングを完全に外す96キロのカーブ。この日、最速139キロに対し、43キロ差の緩急で阪神打線を手玉に取った。

 極限状態の緊張、不安の中で、自身の中に宿る「島人の信念」が好投を導いた。登板前日の18日、宮崎から故郷を見つめながら言った。「沖縄はイチャリバチョーデーですから。『1度会えば、みんな仲間』という意味なんです」。一瞬だけ間を置き、すぐ続けた。「子供たちに自分がマウンドに立っている姿を見せることが一番大事。当然、1軍に残るために結果にも内容にもこだわる。でも、1番は沖縄の子供たちに夢と自信を与えたいんです」。

 3イニング完全投球で、使命を全うした。「周りを見る余裕なんかなかった。歓声を受けて、たくさんの人が見にきてくれているんだと実感した」。心地よい達成感に浸りながらスタンドの大歓声を独り占めした。1万6000人を超える大観衆の中に沖縄・西崎中野球部の監督を務める父透さん(55)の姿もあった。部活動を終えギリギリ3回表に到着。息子の晴れ姿に「マウンドはグラウンドの一番高いところにある。『上がったらのんでかかれ』と小さいときから言ってきた。気後れすることなく立派だった」と目を細めた。

 当然ながら首脳陣にも強烈なインパクトを与えた。川口投手総合コーチも「気分が悪くなるくらい緊張していたみたいだし、その中で重圧を力に変えたことは評価できる。6番目を目指して頑張ってくれれば」と褒めた。次回登板は中6日で26日、ロッテとのオープン戦で中継ぎ登板が有力だ。「たくさんの沖縄の人が応援に来てくれる。開幕1軍を目指して頑張ります」。このまま中6日で1段ずつ階段を上っていけば-。4月1日、開幕3戦目のヤクルト戦(東京ドーム)のマウンドまでたどり着く。【為田聡史】