93年のドラフトから、大学生と社会人選手に限って入団する球団を選べる逆指名制度が導入された。ドラフトの上位2位までが対象。同時に、球団間の争奪戦による契約金の高騰化防止を目的に最高標準額を1億円とすることを12球団で申し合わせた。

 翌年からは5000万円までの出来高払いも設定できるようになった。出来高払いは定められた成績をクリアすれば手にできる追加報酬。ただ、これらは、あくまで12球団による申し合わせで、プロ野球の“憲法”といわれる野球協約には明記されていない。また94年には公正取引委員会が、契約金に上限を設けると独占禁止法に抵触する恐れがあるとの見解を示した。

 そのため、罰則などの規定はなかったが、07年に流れが大きく変わった。西武がアマ2選手への不正な金銭の供与が発覚した際に設置した調査委員会の調べで94年から05年の間に、15選手に対し最高標準額を超える契約金、総額11億9000万円が支払われたことが公表された。その後、横浜(現DeNA)が05年に入団した那須野巧投手に5億3000万円の契約金を支払ったことも明らかになり、最高標準額超過の実態に世論が批判的な目を向けた。

 当時の根来コミッショナー代行は、両球団を厳重注意処分とした上で「過去の話をいろいろほじくり返して個人攻撃をするのではなく、今後どうするかという話を進めていきたい」と話した。これらがきっかけとなって、世論の批判は選手が球団を自由に選べる制度に向かい、同年のドラフトから選手の球団選択の自由が消滅した。契約金も1億円、出来高払いも契約金の50%を上限とするよう変更されて、違反球団は処分する方針となった。

 <93年以降のドラフト>

 93年<逆指名導入>1位2位選手に逆指名制度導入。最高標準額を契約金1億円にするがダイエーが青学大・小久保裕紀内野手と1億6000万円で契約。

 94年<1億+5000万>契約金最高標準額1億円プラス出来高払い5000万円に再設定(年俸は無制限)。球団職員や練習生の獲得ができなくなる。

 01年<年俸に上限>逆指名からドラフト会議前に2人まで獲得できる自由枠に変更。新人選手の年俸最高標準額が1500万円に。

 04年<裏金事件>明大・一場靖弘投手をめぐり、巨人、横浜、阪神が学生野球憲章に反して現金を渡していた「裏金事件」起きる。

 05年<倫理行動宣言>6月、新人選手獲得活動において利益供与は一切行わない、などの「倫理行動宣言」を実行委員会が発表。ドラフトを高校生と大学・社会人に分離開催。大学生・社会人はドラフト前に1人獲得できる希望枠を導入。育成ドラフト実施。

 07年<契約上限1億>西武がアマ2選手に金銭供与していたことが発覚。調査委員会の調べで西武、横浜が最高標準額を超える契約金を支払っていたとして、厳重注意処分が科された。ドラフト希望枠は撤廃、契約金上限を1億円とし、出来高払いは50%までに。

 08年<ドラフト統合>高校生ドラフトと大学・社会人ドラフトを統合、一括開催に戻る。