<日本ハム5-1ロッテ>◇25日◇東京ドーム

 重圧ではなく、喜びだ。日本ハム稲葉篤紀外野手(39)は至福の時を満喫していた。2000安打まで、残り2本。「プレッシャーもありますけど、この時期、この本数、僕にしか味わえない。味わいたいなというのもある」と充実感が体全体からにじみ出てくる。

 一振りごとに、スタンドのボルテージは上がっていった。1、3、5回と3打席連続安打。ファンが掲げるボードの数字が一気に「1997」を指すと、極めつきは7回1死一塁。2ボールから140キロ直球を右前へはじき返し、今季初めての4安打固め打ちだ。「勝つために1本でも多く打ちたい。コンパクトにいこうと思った」と振り返った。

 20日からの神戸遠征中、ホテルの自室に戻ると、体のケアのためにトレーナー室へと向かった。その際、ドアのオートロックがかからないように、内鍵をドアに挟み開けておくのが習慣になっている。数分後、部屋に戻って浴室に入ろうとすると、黒く大きな物体に襲いかかられた。突然の出来事に身を硬くしたが、視界に入ってきたのは、ゲラゲラと笑う中田。不在の間に忍び込まれていた。「アイツ、ふざけんなよ~」。ちゃめっ気たっぷりの後輩の振る舞いに、大記録目前のベテランも笑うしかなかった。

 栗山監督は開口一番、「稲葉のおかげ」と切り出し、「チームを勝たせようという集中力は素晴らしい」とたたえられた。前日24日も、糸井が死球を受けた際に指揮官に近寄り「外野守りますよ」と言ったという。今季は一塁での出場しかないが、献身的な姿勢は常に変わらない。

 東京ドームでは1500安打も放っている。「ふさわしいのかなとも思うけど、それはもう神様に委ねます。一生懸命やりたい」。特大アーチや会心の一打で決めるよりも、勝利で祝えることが最高の喜びだ。【本間翼】

 ▼稲葉が4安打の固め打ちで通算2000安打へあと2本に迫った。今日のロッテは渡辺俊が先発。同投手との対戦成績は通算65打数29安打で打率4割4分6厘。稲葉が安打を多く打っている投手を出すと、(1)藪恵壹30本(2)渡辺俊介29本(3)涌井秀章28本(4)三浦大輔、川村丈夫26本。渡辺俊からは2番目に多く打っており、40打数以上対戦している投手の中では対渡辺俊の打率がトップ(最多安打の藪は104打数30安打)。お得意さん相手に記録達成となるか。