<巨人1-1DeNA>◇10日◇東京ドーム

 投手が粘って、監督が怒って、主軸が打って、DeNAが巨人と引き分けた。先発のブランドンが3回に負傷降板したが、6投手の継投で最少失点でしのいだ。7回には中畑清監督(58)が判定をめぐって大きなジェスチャーで猛抗議。0-1の8回2死二塁から、直前の打席まで11打数無安打7三振と不振だった筒香嘉智内野手(20)が右前に同点適時打を放った。執念が実ったドローだった。

 DeNA筒香が力いっぱい引っ張った打球は一、二塁間を破って、右前へ抜けた。1点を追う8回2死二塁。杉内の138キロ内角直球を捉え、土壇場で追いついた。「体が自然と反応した。2アウトからサラサーが出塁してくれたし、うちの投手陣も頑張っていた。何とかランナーをかえそうと思った」と、引き締まった表情で振り返った。

 若き主砲のひと振りに、チーム全員の思いがこもっていた。投手はベンチ入り8人中7人、野手も16人中15人を使った。中畑監督は「この3連戦はベンチにメンバーが残らない試合が続いている。粘って、粘って、最後に1つになった」と、かすれた声で価値ある引き分けを総括した。

 アツイ抗議も実った。7回に三振の判定を巡り、監督就任後2度目の抗議を約3分間行った。この回2死一塁から、打者鶴岡が空振りでアウトと判定されたが、ファウルと主張。「キャッチャー阿部の動きはファウルでワンバウンドしたボールに土がついたから、ボールを替えてくれというジェスチャーに見えた。その姿を見てなおさらファウルじゃないかと思って抗議した」と、試合後も興奮冷めやらぬ様子で振り返った。東京ドームのスタンドから「キヨシコール」が湧き起こるほどの「熱いぜ!」野球で盛り上げた。

 試合前から戦闘モードに入っていた。これまで対戦相手の監督と試合前練習中にあいさつを交わしていたが、この日は原監督がロッカールームに消えるまで、グラウンドに足を踏み出さなかった。「たっちゃんとは話さない。仲良くなった気分になるからダメ」と、敵対心を出して自らにプレッシャーをかけた。

 その執念に選手も応えた。8回2死から、反撃の口火を切ったのは新外国人のサラサーだった。キャンプ中は遊ゴロしか打たなかったため、「あそこに土地を買っているんだろ」と酷評したが、杉内対策で攻撃的布陣を敷いたため「2番」で先発起用。変化球に苦しみながらも、最後は直球を中堅フェンス直撃の二塁打とし、「成長しているな。いい仕事したよ」と、目尻を下げた。

 巨人戦で勝ち越しはならなかったが、1敗2分けとした。「引き分けは引き分けだけど、粘りが出て、強くなってきた。疲れるけど意味がある」と、手応えを口にした。熱~い戦いはこれからが本番だ。【鳥谷越直子】