<ヤクルト1-5巨人>◇13日◇秋田
孝行息子の好投で、巨人がようやく今季初の勝率5割に到達した。ヤクルト戦に先発した沢村拓一投手(24)が7回を無失点に封じ3勝目。自身の連続無失点を27回2/3まで伸ばした。ヒーローインタビューでは母和子さん(55)への感謝の気持ちを堂々と告白。母の日に、遠く秋田から最高のプレゼントを贈った。チームは3連勝で最大7あった借金を完済し、16日のオリックス戦(東京ドーム)から交流戦に突入する。
スタンドを見渡し、間をおいて、意を決した。沢村の様子が、普段のヒーローインタビューとは少し違った。口を突いて出たのは素朴な言葉だった。「今日は母の日なので…今まで迷惑を掛けてきたので…。今日だけは、母に勝利をささげたいと思います」と、気持ちに正直に、大きな声で語りかけた。純な秋田のファンにも十分に届き、こまちスタジアムをゆっくりとしたテンポの拍手が包んだ。
阿部、ボウカー、田中、バレンティン。ピンクのリストバンドをつけて試合に臨む野手が両軍にいた。おのおのが母への感謝をスタイルで示していたが、沢村は投手。低くて緩い秋田のマウンドで表現するしかなかった。1回1死二塁をしのぐとストライク先行となり、継続中のゼロ行進を続けた。勝負どころはいつもの力勝負。6回2死一、二塁。2安打されていた宮本をスライダーで左飛。7回2死一、二塁は森岡を力ない一直。ともに内角をシビアに突いた。「点を取っていただき、野手の皆さんに感謝です」と、また謙虚だった。
丈夫な体に生んでもらった。この日もそうだったが、イニング間のキャッチボールは下半身を使わず、上半身だけで行う。好んで取り入れる遠投もそう。ノーステップで100メートルに届く鉄砲肩は天賦の才。「上半身をできるだけ大きく使って投げたいから」と狙いを説明し、「自分の感覚では、遠投の飛距離と球速は比例すると思う」と続けた。
登板翌日も「ガッツリやってきましたよ」と、ウエートトレーニングを行ってから球場入りする。常識にとらわれない独特な調整は、「自分が成功すれば、新しい方法論となる」との志がある。肉体を磨き上げるメンタルの強さも、親から継いだ立派な資質だ。孝行息子は「交流戦に入る。僕ももっと成長していきたい」と結んだ。秋田で見せた優しさはしまい、また鬼の形相でパ・リーグに立ちはだかる。【宮下敬至】
▼沢村が7回無失点で3勝目を挙げ、巨人は秋田県内で61年ぶりの白星を記録した。これで沢村は4月21日ヤクルト戦の2回から27回2/3連続無失点。この日は6安打、3四死球と毎回走者を出し、3者凡退に抑えたのは1度もなし。連続無失点中、1イニングに出した走者数は0人8度、1人13度、2人5度、3人2度。3者凡退は8度しかなく、出した走者は合計29人。連続無失点前の沢村は23人の走者を出して8失点だから、無失点中は粘りのピッチングが光る。巨人で無失点を30イニング以上続けたのは89年斎藤雅と香田が最後。得点圏で被打率6分9厘の沢村が、粘りの投球で無失点をどこまで伸ばすか。



