<西武2-5巨人>◇22日◇西武ドーム

 巨人山口鉄也投手(28)が球団史に名を刻んだ。3点リードを奪った直後の7回に2番手で登板し、打者3人で終えた。開幕からの無失点記録を20試合とし、昨年久保がマークした球団記録(2リーグ制以降)に並んだ。「うれしい…ですが、チームが勝ったことの方が大事だし、うれしいですね」と、生粋のセットアッパーらしい言葉でゼロ行進をかみしめた。

 節目の登板も普段と同じだった。「野手の方が直前に点を取ってくれたから、かなり楽な気持ちになりました。まず先頭バッター、いつもと同じでした」と、一見淡泊だった。だがこの試合前、西武ドーム名物の長い階段を下りながら、山口は自分が残してきたゼロの足跡について、しみじみと考えていた。

 山口

 毎日同じ気持ちで球場に来て、しっかり抑えて、翌日の準備をして、帰る。その繰り返しです。刺激があったらいけない仕事なんですけど、淡々とですね。でも…。

 グラウンド上で感情を表に出さない人。階段を下りきって秘めた本音が出た。

 山口

 ゼロが続くことは、やっぱり毎日、刺激になってる。厳しい場面を抑えたら「よしっ」って思ってる。これでも。毎日。

 育成1期生。地道に今の地位を築いた。歩んだ起伏が大きい分、歓喜と落胆の両極端を味わってきた。「毎日淡々と」と言える、達観に近い実力と心境に今はある。それでもコツコツ重ねた自分の記録を意識しないと言えば、ウソになる。

 3引き分けを挟んだ8連勝期間中(11試合)、山口は7試合に登板した。原監督は「8連勝は振り返ることじゃない。明日のゲームに集中したい。山口はこれからも続けてもらいたい」と至極クールだった。山口も歩調は同じ。本音はまた胸の内にしまい、チームが勝つためゼロを続けるだけ。祝福の声に小さく会釈し、勝ちどきのバスに乗り込んだ。【宮下敬至】