<巨人2-1中日>◇29日◇東京ドーム

 頼れる主将だぜ!

 巨人が阿部慎之助捕手(33)のひと振りで、中日との首位攻防第1ラウンドを制した。4回無死一塁で阿部は、中日先発中田賢から右中間へ豪快に12号先制2ラン。2試合連続弾で流れを引き込み、沢村、山口、マシソンを巧みにリードして1点差逃げ切り勝ちの立役者になった。阿部が東京ドームで本塁打を放つと、チームは23連勝。巨人は今日30日、明日7月1日と連勝すると、今季2度目の首位に立つ。

 チャンスは1球しかなかった。阿部は1球を待った。4回無死一塁。データを頭に焼き付け打席に向かった。「過去の対戦からだと逆球のインコースの直球が多い。いい投手だから1球しかないと思っていた」。カウント1-1からの3球目がデータにぴったりと重なった。139キロの内角寄りの高め直球。これだ。無駄のないスイングで完璧に捉えた。打った瞬間に湧き起こる大歓声。打球は右翼席上段に飛び込んだ。

 宿敵中日との首位攻防の初戦が、どれだけ大事かは阿部が一番分かっている。プロ12年目。常にライバルとしてぶつかり合ってきた相手に「いつも絶対に僅差のゲームになる。そういう心の準備ができていた」と、覚悟して試合に臨んだ。2戦連発となる12号決勝2ランは「引っ張れるボールだけを待っていた」。最悪の併殺を避け、最低でも進塁打を意識した。「ゲッツーだけは良くない。でも、ゲッツーになるとは思わなかった」と、最高の結果を示してみせた。

 長いペナントレースを勝つための方法論がある。「勝ち方も大事だし、負け方も大事」。交流戦の優勝マジック1で迎えた14日の日本ハム戦で5失点惨敗を喫した。「これで優勝できなかったら、(リーグ戦)再開後に大きなダメージを与えてしまう。絶対に優勝をしないといけない」と、危機感すら強調した。その前日13日の同カードは、最大7点差つけながら終盤に5失点。「こういうのが一番ダメ。誰も勝った気がしていない。最後まできっちり締めてこそ次につながる」と、怒り心頭で訴えた。

 強いキャプテンシーでチームを引っ張る主将が「必勝弾」で、この日も宿敵を沈めた。東京ドームで阿部が本塁打を打った試合は実に23連勝。中大の後輩、沢村と上がったお立ち台では「(沢村が)ここのところピリッとしていなかった。今日、負けていたら五厘刈りにでもしてやろうと思っていた」と、阿部節を飛ばしながらも「毎回、今日ぐらいやってほしいですね。絶対に必要な存在なんだから」と、たたえた。

 3連戦の初戦を取り、中日に1ゲーム差に迫った。「まだまだ、先は長い。首位攻防とかは考えていないけど、初戦を取れたことが大きい。だから、明日はもっと大事になる」。最後まで粘る竜を振り払っての1点差勝利。キャッチャーマスクを外し、ナインとハイタッチする瞬間を貪欲に追い求めることが、最終目標達成につながる。【為田聡史】

 ▼阿部が先制の12号2ラン。これで阿部が東京ドームで本塁打を打った試合は10年7月4日阪神戦から2分けを挟んで23連勝となった。今季、東京ドームで打った1発は5月19日先制V弾、同27日同点弾、6月11日逆転V弾、同24日同点弾、同29日先制V弾と、すべて肩書付きで3本がVアーチ。23連勝中に打った26本のスコア状況は同点7本、1点差7本、2点差8本、3点差4本。Vアーチ8本を含め2点差以内で22本と、競っている場面で本塁打を放ってチームの勝利に貢献している。