<中日0-1ヤクルト>◇25日◇ナゴヤドーム

 最後のアウトも内野ゴロだった。ヤクルト館山昌平投手(31)は、低めに丁寧にボールを集めて9回を乗りきった。「川本のミットをめがけて、あとは突っ込むだけでした。0-0と同じ感覚で、先に点をやらないつもりで投げました」。プロ入り初めての1-0での完封。バントを含め、内野ゴロは18個。味方がわずか2安打に抑えられながら奪った1点を守った。連敗中のチームを救う快投だった。

 これで19イニング連続無失点。右のエースが帰ってきた。「前半戦は監督、コーチが血行障害を理由に代えてくれたりしていたけど、もう解禁といいますか、ボールも指にかかってますし、不安もないです」。手術前は「完投」が代名詞だった男が、ようやくの全快宣言だ。「これで他の血行障害の手術をした選手たちの勇気にもなると思います」と、前例のなかった復活劇に胸を張った。

 大先輩も着ていたオールドユニホームでの完封は、感謝の証しだった。1978年(昭53)の優勝投手だった松岡弘氏は、入団時の2軍投手コーチ。肩を手術して入団した館山には、松岡コーチと相談して、横手投げに変えた経緯があった。「松岡さんがいなかったら、今の自分はいないと思うと感慨深い」と、思いを口にした。

 プロスタートの原点を見つめ直した1勝は、今後への活力にもなる。狙うのは、逆転でのクライマックスシリーズ進出だ。「1つでも多く勝って、CSに出たい」。チームを勝たせるのがエース。その原動力になる覚悟はできている。【竹内智信】