<オープン戦:中日0-6巨人>◇11日◇浜松

 開幕投手にふさわしい好投だった。巨人宮国椋丞投手(20)が先発。6回を投げ4安打無失点、無四球でまとめた。140キロ台の直球にカーブ、スライダーを織り交ぜ、新球のカットボールも試投。わずか66球で18個のアウトを積み上げた。WBC日本代表が決勝トーナメントに進出し、内海、杉内、沢村は開幕2カード目に回ることが決定的。20歳の3年目右腕が大役を任されることになる。

 宮国のペースだった。開幕投手を手中に収めた若武者がひと回り成長した姿を披露した。外国人3人を含む主力級が名を連ねる中日打線を完璧に封じた。3回までは無安打投球。4回、5回は安打を許すも、ともに併殺で切り捨てピンチはつくらない。6回に得点圏に初めて走者を進めたがホームは踏ませず「序盤はテンポよく投げられました。テンポを意識して、それが出来たので良かったと思います」と、振り返った。

 投球術も光った。制球力はストライク率が約65%と平均的だが、無駄球を減らした早め勝負で打たせてとる投球を心掛けた。6回を66球でまとめ、川口投手総合コーチが「予定では80球ぐらいだったけど、80球だと完投しちゃうかもしれないペース。後ろにアコスタも西村もいたからね」と、うれしい悲鳴を上げるほどの快投。十分な余力を残してマウンドを譲った。

 開幕に向けた新兵器もテストした。右打者の松井佑、谷繁に対しカットボールを試投。120キロ台後半で外角から鋭く切り込む軌道を確認した。バットの芯を外して、狙い通りに内野ゴロを打たせたことも収穫だった。だが、慢心はなく「まだまだ課題は多い。勝負どころで逆球もあった。スタミナもまだ足りない」と、謙虚に話した。

 開幕まで残り3週間を切り、ローテーションの編成も大詰めに入っている。原監督は「すべてにおいて良かった。昨年の経験を今のいい状態に生かしている。昨年がホップとすれば今年はステップを踏んでほしい」と、さらなる飛躍を期待。開幕投手に関しても「十分に候補であることは間違いない」と、大役に指名する可能性を公言した。

 「全く意識していない。まだ、何も言われていない。任されたところで投げるだけです」。宮国の言葉には気負いはなかったが、目には、力が宿っていた。【為田聡史】