<広島0-3ヤクルト>◇22日◇マツダスタジアム

 ヤクルトの「ライアン」が12球団のルーキー完封一番乗りを果たした。小川泰弘投手(23)が広島を5安打に抑え、三塁を踏ませぬ好投でリーグトップに並ぶ7勝目を挙げた。4月にプロ初勝利を挙げた好相性のマツダのマウンドで、独特のフォームを支える下半身の力を生かし切った。今季チーム初完投でもあり、最下位からの逆襲を狙うチームに勢いを与えた。

 初完封の瞬間、小川にはガッツポーズも満面の笑みもなかった。仲間が笑顔で駆け寄ってきても、表情ひとつ変えなかった。

 正確には、変えられなかった。「油断したら負ける」と念じ続け、9回を投げ抜いた。「ルーキーですがグラウンドに入ったら関係ない。投げる試合は全部勝つという強い気持ちだった」。勝っても簡単に笑えないほど高い集中力を保ち続けていた。そんなライアンに、小川監督も「小川とバレンティンに尽きる。コメントのしようがないですね」と脱帽した。

 低めへの制球力が際立った。1回1死二塁では丸、エルドレッドをともに低めの変化球で空振り三振。7回2死一、二塁も石原を低めの球で三直に仕留めるなど、最後まで三塁を踏ませなかった。

 最大の敵は「疲れ」だった。5月中旬、「疲労…残念ながらあります」と漏らした。左足を高く上げる独特のフォームを支えるのは、太さ65センチの太ももに代表される強靱(きょうじん)な下半身だ。プロ入り後、疲労回復のケアを念入りに行うようになった。血の巡りが良くなると聞き、就寝時に膝裏に置くための足枕を取り寄せ、足湯も試した。「疲労のピーク」と認めた5月25日ソフトバンク戦でも勝利し、長いシーズンを投げ抜く調整法の手応えを得ていた。

 最適のマウンドでもあった。一般的に「高い」と言われるマツダでは、上から投げ下ろすタイプの小川にとって、傾斜を利用した体重移動で投げることができる。体が突っ込む修正点も出ず、ストライク先行の省エネ投球をアシストしていた。

 7勝で新人王を争う巨人菅野に並んだ。「それよりも1戦1戦、できることを一生懸命やるのが大前提」と言い切った。館山、石川、村中ら期待された先発投手が軒並み負傷や不振で苦しむ中、チームの初完投をマーク。「ブルペンの方にも休んでもらって、役割が果たせて良かった」。頼もしい23歳が巻き返しのキーマンになる。【浜本卓也】

 ▼小川がプロ初完封で7勝目。新人投手の完封勝ちは今季両リーグ初めてで、ヤクルトのルーキーでは10年4月23日中沢以来だ。新人投手の7勝もヤクルトでは10年中沢(7勝9敗)以来だが、中沢の7勝目は8月7日。6月中に7勝した新人は球団史上初めてだ。小川の成績をホーム、ビジターで比較すると

 

 

 

 

 勝-敗

 防御率

 ホーム

 3-1

 4・86

 ビジター4-1

 1・48

 ビジターは4勝目で防御率1・48。今季のヤクルトはビジターで8勝(22敗1分け)しかしておらず、チーム半分の4勝を小川が挙げている。