<DeNA4-3ヤクルト>◇15日◇横浜

 DeNAが終盤の集中打で4日ぶりに最下位を脱出した。3点差の7回に鶴岡一成捕手(36)の2点適時二塁打で1点差に迫ると、続く8回にナイジャー・モーガン外野手(33)の7号2ランで逆転した。中畑清監督(59)は試合前、地元の福島・矢吹町から持ち込まれただるまの左目を描き入れ、クライマックス・シリーズ(CS)進出を祈願。この秋、右目を描く日はくるのだろうか?

 逆転勝ちで5位争いの初戦を制し、中畑監督もご機嫌だった。「素晴らしい勝ち方。最高のナイスゲームですね。めっちゃうれしいです。あ、めっちゃなんて言葉を使ってしまって。そんな年じゃありませんね」。4日ぶりに最下位を脱出し、喜びを隠せなかった。

 中盤までは嫌なムードが漂った。前回2日の対戦で完封負けを食らったヤクルト八木の前に6回まで3安打。得点圏に走者を送ったのも1度だけと抑え込まれていた。負ければ最下位定着となりかねない。その流れをモーガンが破った。1点を追う8回裏1死三塁で右翼スタンドへ逆転2ラン。同監督は「頼もしく見えるね。嫌な雰囲気をいっぺんに晴らしてくれる働きをしてくれた。あそこで逆転出来れば理想的、というところで決めてくれた」と、褒めちぎった。

 7カードぶりにカード初戦を勝った。その陰には地元福島・矢吹町からやってきた“必勝だるま”の存在があった。この日は矢吹町町民を中心とした「中畑清監督後援会」のメンバー約50人が試合を観戦。町の公民館に飾られていた高さ約1メートルの巨大だるまを持参して来ていた。後援会の佐藤友美事務局長は「クライマックスに出るためにも大事な3連戦。監督には左目に目玉を入れてもらったよ」。中畑監督も、「クライマックス祈願のだるまだな。決まったら、もう片方にも(目を)入れるよ」と話していた。その祈りが届いたのか、7転びならぬ、“6転び”でカード頭をものにした。

 そしてもう1人、勝利を誓った大事な人がいた。昨年12月に子宮頸(けい)がんで他界した仁美夫人。四十九日を過ぎてから初めて迎える新盆で、この日の午前中には自宅で法要が営まれた。遠征先の大阪から横浜へ向かう新幹線の車中だった中畑監督は、心の中で手を合わせ、必勝を約束していた。

 これで3位までは1・5ゲーム差。必勝だるまは試合後、矢吹町に戻り、CS進出を目指す戦いを見守る。「だるま万歳だな。今日(右目を)入れてもいいくらいだよ。そのくらいうれしい勝ち。でも大事なのは明日!」。喜びに浸りながらも、最後はしっかり気を引き締めていた。【佐竹実】