<DeNA0-6巨人>◇6日◇郡山

 理詰めの投げ合いを制した。巨人のエース内海哲也投手(31)が7回を投げ無失点で、チームトップに並ぶ9勝目を挙げた。雨で足場が不安定の中、DeNA先発三浦とともに本来の打たせて取る投球に徹し、勝った。投球論を戦わせ尊敬し合う2人の技巧派が、投球の奥深さを存分に披露した。巨人は今日7日にも優勝マジック41が点灯する。

 ハマの番長を鏡で映し、右投げがそのまま逆になった。「自分のバランスで丁寧に投げられた」と内海は言った。足場が緩い郡山のマウンドで、エース同士、胸を張って堂々と立った。美しい1本足で軸を作った。下半身主導で腕が振れ、シルエットを大きく見せた。抑えても打たれても、能面を貫く姿も同じだった。

 投球内容もうり二つだった。最速はともに141キロ。力で抑え込む気はない。結果球から逆算し、チェスの王者のように冷徹に、相手を追い詰めていった。

 5回。1番石川をスライダー3球で遊ゴロ。アウトローいっぱいに2球収めて追い込み、そこからあえてボール半個高く制球し、もてあそんだ。6回1死のブランコも同じだった。「前回対戦で、チェンジアップを使って抑えた。で、スライダー」と、4球目から3球続けた。5球目をインローにワンバウンドさせ、振らせた。結果球は同じワンバウンドでも、さらにボール1個内側へラインを出した。「僕の持ち球。うまいこといった」と納得した。

 内海は三浦を尊敬する。昨年末、互いの投球論を語り合う機会があった。打者をどうやって抑えるか議論になった。「バッターを打ち取る結末を最初に考えて、筋書きを作る」。逆算の思考が一致した。逆算の思考は調整法にも当てはまった。内海は「三浦さんはいつも球場に早く来て、1人で走っている。アーリーワーク、まねさせてもらいました」と打ち明けた。

 今季の勝てなかった時期、内海はこの方法論を徹底した。午前7時前からジャイアンツ球場に行き、マウンドの前にネットを設営。1人で、セットポジションからのネットピッチングを至近距離で繰り返していた。球場の管理担当者を「内海さんは、特に負けた翌日の朝が早い。我々が間に合わない時がある」と驚かせるしつこさ。18・44メートル先の目標から逆算して、指からボールが離れる瞬間の感覚を研ぎ澄ませた。

 「楽しかった」三浦との投げ合いを制した。7回被安打6の無失点。自分らしく1500投球回をクリアし「ランナーを出してからが僕の真骨頂。粘れた」と満足した。何より、6連戦の頭を任された後半戦から自身は3連勝。調子と比例し首位が盤石となり、今日にも優勝マジック41が点灯する。本物は酷暑にのしあがる。巨人のエースらしく連覇へ導く。【宮下敬至】

 ◆内海対三浦

 投げ合いは過去4度。最初は05年8月10日、8回3失点と好投した三浦が勝ち投手で、内海は勝敗なし。2度目の対決は07年の開幕戦で7回2失点の内海が、6回3失点の三浦との投手戦を制した。3度目は08年5月15日。内海は6回2/3を2失点、三浦は7回1失点で、どちらも勝敗はつかず。4度目が12年7月4日。7回3失点で白星の三浦に対し、内海は4回0/3を4失点。5度目となったこの日の結果を含めると2勝2敗の五分だ。