日本ハム11年目の鶴岡慎也捕手(32)が今オフ、フリーエージェント(FA)権を行使しての移籍を視野に入れていることが23日、分かった。今年7月に出場選手登録日数が8年に達し、国内球団への移籍が可能となるFA権を取得。愛着のある日本ハムへ残留の選択肢は残しているものの、野球人として、他球団での評価にも関心を抱いているようだ。

 最下位に低迷する日本ハムから、扇の要を守る選手会長が、流出する可能性が出てきた。今季途中に国内FA権取得の条件を満たした鶴岡が、権利を行使し、他球団への移籍を視野に入れていることがわかった。FAの取材に対し「今は残り試合に全力を尽くすことしか考えていません」と話したが、親しい関係者によれば、権利を行使し、他球団の評価を聞いてみたいという気持ちも強くなっているという。

 鶴岡は入団テストを経て、03年に三菱重工横浜硬式野球クラブから日本ハムに入った。4年目の06年から出場機会を増やし、リーグ優勝を4度、1度の日本一を経験。09年には自己最多の122試合に出場し、ダルビッシュ(現レンジャーズ)の女房役としても有名になった。

 愛嬌(あいきょう)のあるキャラクターで地元ファンの人気も高く、本人もお世話になった球団には、愛着や恩義を感じている。まずは日本ハムとの交渉を最優先に考えてはいるようだが、若い大野、近藤との併用で出場機会が減っているのが現状。事実、この日の楽天戦も出番なく終わった。今後の野球人生を考え、また自身をレベルアップさせるためにも、FA権行使に踏み切って、新たな環境を模索する可能性も出てきた。

 今季はここまで106試合の出場ながら、打撃は好調で、打率3割2厘と好成績を残している。経験豊富なリードで投手陣の信頼も厚く、昨年はベストナインにも選ばれており、大きな故障がないことも魅力。正捕手を固定できていない球団も多く、行使すれば争奪戦となりそうだ。

 日本ハムは2年前にエース・ダルビッシュがポスティング移籍で退団。昨オフも田中がFA権行使でのメジャー挑戦、糸井をトレードで放出している。連覇の夢が破れ、本拠地移転以来初の最下位危機にさらされている今季。鶴岡の動向を含め、再び激動のオフが待っているかもしれない。

 ◆日本ハムとFA権行使

 過去13人(移籍8人、残留5人)がFA宣言している。95年オフの金石昭人(残留)、河野博文(巨人へ移籍)が最初で、北海道へ本拠地移転後は04年の奈良原浩(残留)が初めてのケース。本拠地移転後のFA移籍は、06年小笠原道大(巨人へ移籍)、10年森本稀哲(横浜へ移籍)ら国内3人、昨年の田中賢介(米ジャイアンツとマイナー契約)ら米国移籍も3人。逆にFA加入は、04年オフにメジャー移籍を断念し、ヤクルトから入団した稲葉篤紀のみ。