阪神が22日、待望の「4番」&「守護神」をダブルで手に入れた。韓国サムスンの呉昇桓(オ・スンファン)投手(31)と2年総額8億5000万円で契約したと発表した。韓国最多277セーブ記録を持つ剛腕には藤川がつけていた背番号「22」を用意するVIP待遇まで明らかになった。さらに米国では新4番候補マウロ・ゴメス内野手(29=ナショナルズ)と1年総額120万ドル(約1億2000万円)で契約。今季、最も苦しんだ2つの重要ポイントが一気に強化された。(金額は推定)

 猛虎が待望の守護神を獲得した。球児の後継者を手に入れた。韓国・大邱のサムスン球団事務所で最後のハードルとなった移籍金の交渉がまとまり、契約にこぎつけた。条件は年俸2億5000万円、契約金1億円、移籍金2億5000万円の総額8億5000万円とみられる。

 韓国での9年間で国内記録となる277セーブを積み上げたスーパースターに対し、条件面だけではなく、ふさわしい待遇を検討している。12年まで絶対的守護神として君臨した藤川(現カブス)の背番号「22」だ。サムスンでは21番を背負っていた呉昇桓だが、球団は1年間、凍結していた“猛虎守護神の証し”とも言える番号を検討している。

 あらゆる好待遇で迎えられる呉昇桓は、猛虎の一員になる喜びを、球団を通じコメントした。

 「最初から好条件で深い関心を持ってくださった阪神球団に感謝します」

 これを受けて、担当者とともに韓国に飛んだ中村GMも喜びを語った。

 「シーズン中に呉選手を2度見たが、ベストコンディションでない状態の中でも完璧に抑えていた。呉選手がマウンドに上がると違う雰囲気を感じられた」

 ソフトバンク、楽天など国内他球団、さらにはメジャーの影もちらつく中で長丁場となった水面下での争奪戦を制した。

 吉報を受けた和田監督も、優勝を狙う来季への手ごたえを口にした。

 「1年間、苦労したポジションなんで、そこをしっかり埋めてくれることを期待します。韓国の選手は真っすぐに強い中で、真っすぐで空振りがとれる。韓国で指導した経験のあるコーチに聞いても、ずばぬけている。マウンドで雰囲気がある投手と言っていた」

 指揮官が言うように、藤川が去った今季は先発の久保を抑えに配置転換してスタートした。だが、結果が出ず、途中から日替わり守護神となり、最後は福原が務めることになった。最後まで奮闘したリリーフ陣だが、終盤には疲れが出たのも確かだった。

 背番号「22」を背負った剛腕が甲子園の最終マウンドに仁王立ちする。猛虎に欠けていたワンピースが埋まる。来季へ向けての希望が一気にふくらんできた。【鈴木忠平】

 ◆呉昇桓(オ・スンファン)1982年7月15日、韓国生まれ。04年ドラフトでサムスンに入団。05年に新人王。韓国球界で5度のセーブ王を獲得。通算277セーブは同国最多。WBCは3大会連続で韓国代表に選ばれた。178センチ、92キロ。右投げ右打ち。

 新助っ人は日本野球の予習ばっちりデース!

 阪神は22日、来季の新外国人としてマウロ・ゴメス内野手(29=ナショナルズ)と米カリフォルニア州のホテルで契約を結んだと発表した。1年契約の総額120万ドル(約1億2000万円)、年俸85万ドル(約8500万円)で背番号44を用意。今季3Aバファローで29本塁打を放った大砲は意欲十分のコメントを寄せた。

 「本当にうれしい。ドミニカでも、日本の野球を経験しているルナ(中日)ヘルマン(西武)両内野手からいろいろと話を聞かせてもらっています」

 早くも、日本球界で活躍する母国ドミニカ共和国の仲間から情報収集。中日ルナは1年目の今季、開幕直後から打ちまくり、両膝故障で帰国するまでの85試合出場で打率3割5分をマークした。西武ヘルマンも2年目の今季は昨年に続いて全試合出場し、打率3割1分9厘。実績十分の2人から、早くも日本野球に順応するカギを聞き出している。

 マイナーでの下積みが長く、新天地ではハングリー精神で勝負する。席上では、オマリー打撃コーチ補佐とディナーをともにし、助言も得た。和田監督も「パワーヒッターには間違いないし、変化球にもついていける。(フィルダーに)タイプ的に似ているかな。フルスイングできる怖さを兼ね備えている。制球を間違えたら怖いぞと。核になってくる」と評価。89年に阪神でプレーし、メジャー復帰後も通算319本塁打と活躍したフィルダーになぞらえる。懸案だった4番候補の1人だ。

 ゴメスは「ここ数年、3Aで成績を積み上げても、ほとんどメジャーでチャンスをもらえなかったので、モチベーションを保つのが大変でした」と言う。今オフは母国でウインターリーグに出場。打撃練習も継続する。カリブ育ちの怪力を見せられるか。白球をえじきにするG砲が新打線に脅威をもたらす。【酒井俊作】

 ◆マウロ・ゴメス

 1984年9月7日、ドミニカ共和国生まれ。03年レンジャーズと契約。10、11年ブレーブス傘下を経て12年レッドソックスに移籍後メジャー昇格し、37試合で2本塁打、17打点、打率2割7分5厘。今年4月にブルージェイズ傘下、9月にナショナルズ傘下にそれぞれ移籍。一塁のほか三塁手としても出場経験がある。188センチ、104キロ。右投げ右打ち。