<ロッテ3-9日本ハム>◇5日◇QVCマリン

 かっこよすぎるバースデーだ。5日に20歳の誕生日を迎えた日本ハム大谷翔平投手が、プロ初の1試合2本塁打で自らを祝った。ロッテ戦に「3番DH」で先発出場。1回に左翼への4号先制2ラン、9回には右越え5号2ランと、自身最多4打点と魅了した。1回は4番中田も2者連続アーチとなる14号で続き、初の「ON砲」そろい踏み。大勝を呼び込み、昨季から続くQVCマリンでの連敗を7で止めた。

 めでたすぎる新成人だ。ファンからのハッピーバースデーの大合唱が響いた。大谷が快音で返礼した。1回1死二塁。祝福ソングが鳴りやむまで、打っていいか悩んだ。「最後まで聞けて良かった」とスッキリ迎えた、カウント2-0。藤岡の外角球だった。スライダー待ちでバットは遅れたが、本能が反応した。コンタクトすると力のままに振り抜いた。「強いスイングができればいい」。スライスせず、左翼ポール際へ一直線で押し込んだ。

 節目は、鮮やかに彩られた。中田がソロで続いた。2者連続弾で「平成のON」で公式戦初のそろい踏み。「うれしかったです。序盤で流れが作れたので」と、先輩アーチストとの競演で大勝へ導いた。クライマックスも粋に演出した。9回2死三塁。金森の内角高め直球を、右翼席上段へ突き刺した。「とにかく勝てたことが良かった」と、ささやかに喜んだ。

 純真なルックスのまま、脇目も振らずに野球道を歩んできた。遠征先でも、独自のライフスタイルを貫く。仙台の牛タン、博多のもつ鍋にラーメンなど…。チームメートの先輩らが息抜きで、ご当地名物を目当ての外食を楽しむ中で、宿舎ホテルで過ごすことが多い。チームの夕食会場が「メーン・ダイニング」だが、設定されてないケースはルームサービスで済ますことも多々。グラウンド以外での無用な精神面、肉体面の疲労の排除に努めてきた。

 先輩の誘いを断ち、自分を律する強い心。二刀流を最優先し、道を切り開く推進力になってきた。栗山監督は「まだハタチだもんね。ピチピチでしょ」と、今後も外出の際に届け出する義務を解除しない方針を打ち出しているが、心配不要。多感な年頃としては、完璧過ぎる「心技体」が備わっている。「また明日あるので切り替えていきたい」。永遠の野球少年は20歳を迎えたこの日、証明した。一流のプロ野球選手へと成熟し始めた胎動を、堂々と示した。【高山通史】

 ▼大谷が初回に先制4号。大谷の勝利打点は昨年2度、今年は4度目で、勝利打点付きのVアーチはプロ入り初めて。中田も1発を放ち、2人のアベック本塁打も初めてだ。この日は大谷の誕生日。通算868本塁打の王(巨人)は誕生日の5月20日に3本記録し、初めて打ったのがプロ4年目の62年。この62年5月20日国鉄戦では長嶋も1発を放って6度目のONアベックアーチを達成。王と長嶋はプロ野球最多の通算106度のアベック弾(連続は29度)を記録したが、大谷と中田のアベックは何度見られるか。また、9回には5号を放ち、同一シーズンに「5勝+5本塁打」は77年松岡(ヤクルト=9勝+5本)以来になる。

 ◆主な打者の誕生日弾

 野村克也(南海)は33歳の誕生日だった68年6月29日近鉄戦(大阪)で1試合3発。野村はこの3本を含め計5本打った。松井秀喜(元ヤンキース)は日米通算4本(08年に逆転満塁弾)。金本知憲(阪神)は07年の満塁弾など3本放っている。秋山幸二、伊東勤(ともに西武)は満塁弾。土井垣武(東映)は54年7月1日にバースデーサヨナラ本塁打。中田翔(日本ハム)は19歳の誕生日の08年4月22日、イースタン・リーグの巨人戦で130メートル弾。