<セCSファーストステージ:阪神0-0広島>◇第2戦◇12日◇甲子園

 阪神が史上初の「決まり手」で球団史上初のクライマックスシリーズ(CS)ステージ突破を決めた。初戦の1-0勝利に続き、延長12回を無失点に抑えて引き分け以上が確定。規定によるコールドゲームで初のファイナルステージ進出を決めた。シーズン39セーブの守護神呉昇桓(32)が9回から異例の3イニングを無失点に抑え広島に引導を渡した。15日からリーグ優勝の巨人と6試合制で日本シリーズ進出を争う。

 阪神和田監督は強がった。史上初の「引き分けコールド」で初のCS突破を決めた。鈴木誠の飛球を大和がつかむ。歓喜のジェット風船が舞った。0-0でも12回表で試合は打ち切り。目頭を押さえていた和田豊監督(52)は、涙かと聞かれると「まだまだ先があるのでね」。両目は光って見えた。締めた福原から白球を左手でもらうと、大事そうに右ポケットにしまった。

 和田監督

 監督になって1勝目以来、うん。福原がね、譲ってくれたというか、持ってきてくれた。ありがたいね…。

 広島とのサバイバルは連日の我慢比べだった。“奮投”の投手陣を、またも援護できない。シーズン終盤から不思議とホームが遠い甲子園。1番西岡が3安打しても、5回から3イニング連続で先頭打者が出塁しても「0」を並べた。2試合19イニングで1得点。胃の痛くなるような展開で、リスク覚悟の勝負をかけた。

 9回から呉昇桓を投入した。前日11日は3者連続で空振り三振と好投の守護神は力強く腕を振った。9回は中軸3人をピシャリ。10回は先頭を出しながら二塁へ進めなかった。2回で25球。来日1年目でシーズン65試合を投げたタフネス右腕も、最長は2イニングだった。10回表が終わると、指揮官はベンチを横断して駆け寄っていった。

 「大丈夫か」

 「いけます」

 石仏はマウンドでは見せない笑顔を返した。昨年の韓国シリーズで4イニング投げた経験はある。悔いなき戦いへ、指揮官も来日初の3イニング目を決めた。もちろん疲れはある。意気に感じた。11回も先頭を出したが3人で仕留め、ベンチに戻ってきた。魂を込めた36球。2年越しで獲得した韓国の至宝が、またも窮地を救った。

 呉昇桓

 投げることに関しては問題ない。疲れは感じない。今日は2イニング目が終わってから(中西投手)コーチと監督がチェックに来てくれた。大丈夫、とマウンドへ上がった。

 点は取れなくても、点を与えなかった。広島にリベンジを果たし、5度目のCSでついにファイナルステージへ進む。待っているのは宿敵巨人。和田監督は「(巨人に)アドバンテージがあるけど、我々も先発2枚で乗り切れたので万全の態勢でいける。東京ドームでもう1回、ひと暴れします」と力を込めた。涙は、敵地で勝つまで取っておくそうだ。【近間康隆】

 ▼阪神が1勝1分けで初のファイナルS進出を決めた。プレーオフ、CSの引き分けは、81年第3戦ロッテ5-5日本ハム(9回)、08年2S第3戦巨人5-5中日(12回)に次いで3度目。ポストシーズンで0-0の引き分けは、日本シリーズの57年第4戦巨人-西鉄(延長10回)以来、57年ぶり2度目。11年ファイナルS第3戦のソフトバンクが同点の延長12回表終了時にシリーズ進出が決定したが、パ・リーグは12回裏も行ってソフトバンクがサヨナラ勝ち。引き分け試合でステージ突破が決まったのは初めて。

 ▼阪神は第1戦が1-0、第2戦が0-0。プレーオフ、CSで第1戦から2試合連続無失点はファイナルSから出場した10年中日(第1戦5-0、第2戦2-0)に次いで2度目。日本シリーズでも51年巨人(第1戦5-0、第2戦7-0)が記録しているだけで、投手陣はポストシーズン史上3度目の記録をつくったが、阪神の得点も2試合で福留の本塁打による1点だけ。得点圏に走者を置いた場面で阪神が10打数0安打、広島が9打数0安打と、両軍で適時安打が1本も出なかった。

 ◆CSの主なルール

 ファーストステージ(S)は3試合制。1勝1敗1分けの場合は、レギュラーシーズン上位チームがファイナルSに進出する。延長は12回まで。引き分けの再試合はなし。セ・リーグは後攻チームが王手をかけて迎えた場合、ステージの勝ち上がりが確定した時点でコールドとする。先攻チームの攻撃が同点のまま終了した場合は12回裏は行わずに終了。後攻チームが12回裏に同点に追いついた場合は、追いついた時点で終了とする。パ・リーグは延長12回の裏も最後まで試合を行う。11年ソフトバンクはファイナルS突破に王手をかけていた第3戦で、延長12回表を同点で終えて突破を決めたが、続行された12回裏に長谷川がサヨナラ打を放って勝利した。