<パCSファイナルステージ:ソフトバンク3-2日本ハム>◇第1戦◇15日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンクが優勝を決めたリーグ最終戦に続き、CSファイナルステージ初戦も劇的サヨナラ勝利だ。1点ビハインドの9回1死二、三塁で吉村裕基外野手(30)が中越えに逆転サヨナラ二塁打を放った。今季限りの辞任を発表した秋山幸二監督(52)は、先発大隣憲司投手(29)を8回途中まで引っ張る執念の采配。アドバンテージを含めて2勝と、日本シリーズ進出に圧倒的優位に立った。

 秋山ホークスの“最終章”は劇的に幕を開けた。吉村が突き上げた右拳にチームの思いが込められていた。サヨナラ劇の主役は二塁を回り、駆けてきた仲間を次々と抱き締めた。「最高に気持ち良かった。普段あんまり走らないんで、走りすぎて頭が痛いです」。

 1-2の9回。先頭李大浩が2ストライクから四球。続く松田は送りバントを2球失敗し、秋山監督の顔が一瞬青くなった。強攻に切り替え、3球ファウルで粘ると、最後はバットを投げ出すような中前打。失敗がもたらした執念が打線をつなげた。

 1死二、三塁で吉村は冷静だった。相手は抑えの増井。直前にロッカー室へ戻り通常より0・5インチ短い33・5インチのバットを選んだ。「増井投手の球は速いので。気持ちの不安をなくして打席に入った」。落ちきれなかったフォークを仕留め、前進していた陽岱鋼の頭上を越えるサヨナラの二塁打だ。「走者がこけることもある。二塁までしっかり走りました」とさらに冷静。秋山監督の教え子はそつがなかった。

 DeNAでは無縁だったポストシーズンに初出場。吉村は「監督にはずっと指導を受け、試合にも出させていただきました」。移籍2年目。キャンプで日が落ちるまで打撃指導を受けたことも。「監督はスーパースター」という指揮官とサヨナラする時が迫っている。重みのある一打だった。

 秋山監督はおどけて言った。「最後の最後まで何が起こるか分からないな、野球は」。CS前日の辞任表明で周囲を驚かせたが、自分のチームに驚かされた。率いて6年のチームはたくましかった。もう心配はいらない。「CS初戦は緊張するけれど、こういう勝ち方は勢いがつくね」。日本一になって本当のサヨナラを言う日は、まだもう少し先だ。【押谷謙爾】

 ▼ソフトバンクが逆転サヨナラ勝ち。プレーオフ、CSのサヨナラ勝ちは12年ファイナルS第5戦の巨人以来8度目で、一気にひっくり返した「逆転サヨナラ」は、スレッジの逆転満塁サヨナラ本塁打が出た09年2S第1戦の日本ハム(4-8→9-8)に次いで2度目。ソフトバンクがポストシーズンで逆転サヨナラ勝ちは、南海時代の日本シリーズ66年第5戦(2-3→4-3)以来、48年ぶりだ。これでソフトバンクはアドバンテージの1勝を含め2勝。日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで「2勝0敗」は17度目だが、過去16度はすべて日本シリーズに進出している。