<都市対抗野球:ヤマハ1-0TDK>◇19日◇2回戦◇東京ドーム

 ヤマハがわずか3安打でTDK(にかほ市)を1-0で下し、3年ぶりに8強入りした。相手先発投手に7回2死までパーフェクトに抑えられたが、3番の長谷川雄一外野手(25)が安打で出塁すると、4番の柳裕太外野手(25)が左翼越えの三塁打を放って決勝点を奪った。準々決勝は21日に行われ、東芝(川崎市)と対戦する。

 柳にとっては見たことのある風景だった。昨年の1回戦。左翼の柳は飛球を見失い、それが相手の決勝点に絡んでしまった。

 7回2死から長谷川雄が安打で出塁する。柳は1ボールからの2球目を強振。左翼へ打ち上げた。だが柳は全力でベースを駆ける。「いつでも次の塁、あわよくば本塁までかえってこようと思って走っている」。二塁を回ったときに左翼を見ると、打球を見失っていることに気がついた。一気に三塁へ滑り込むと苦笑いが込み上げてきた。

 柳

 去年、悔しい思いをした分だけ、ツキがあったのかな。

 とらえたときのバットの感触はよかったが、ややこすったためボールが上がってしまった。柳は「見失う可能性もあるとは思った」と振り返った。相手の気持ちが分かるからこそ、派手なリアクションはとらなかった。ようやく手にした先制点にベンチは盛り上がっていた。

 TDKの先発、豊田には苦しめられた。力のあるストレートと変化球で凡打の山を築いた。右島学監督(44)は「思った以上にコントロールがよかった」と舌を巻いた。ボールが荒れる傾向があるという事前の情報と裏腹に7三振を喫した。柳は「向こうも打てていなかったので。投手が抑えてくれた、それがすべてです」と3回あった三塁のピンチをしのいだ投手陣に感謝した。

 99年以来14年ぶりの4強をかけて、3年前の王者である東芝と対戦する。柳は「もう1試合できるということを考えてやっている」と話した。無欲の姿勢が好結果をもたらしている。【加納慎也】