フロイド・メイウェザーのラストファイトが決まった。9月12日に米ラスベガスで、ハイチ系米国人のアンドレ・ベルトと対戦する。5月にマニー・パッキャオとの世紀の一戦に勝利して以来の試合となる。

 ベルトは30勝(23KO)3敗。デビューから21連勝でWBC世界ウエルター級王座を獲得。5度防衛後にIBF王座を獲得し、現在はWBA暫定王者。昨年3年ぶりの白星、暫定王座戦はストップ勝ちも「マネー」の相手にはだいぶ物足りない。

 メイウェザーが勝てば49戦全勝となる。世界ヘビー級王者で唯一全勝で引退したロッキー・マルシアノの記録に並び、もう1試合で記録更新できる。08年に引退宣言から1年で復帰経緯があり、「また」の臆測もある。「大金を稼ぎ、もういい。前はただの休暇だった」と言うならば、一層物足りない相手だ。

 パッキャオ戦は空前絶後のファイトマネー、興行に、日頃興味を示さない社会からも注目を浴びた。テクニックのすごさは見せたが結果は予想通り。スピード、防御に足で強打者をさばききった。パッキャオのケガも影響したか、打ち合いは見られず。単純にファイトを期待したファンにはガッカリだった。

 ヘビー級が盛り上がりに欠く。代わりに中量級スター対決が注目されたが、中量級では70年代後半から黄金期があった。レナード、ハグラー、ハーンズ、デュランが激闘を繰り広げた。あの時の方が明らかに迫力があった。

 ハーンズは初の4階級、5階級制覇を達成したが、ウエルター級が出発点だった。レナードはウエルターから5階級、デュランはライトから4階級、ハグラーはミドル級で12度防衛した。

 世紀の一戦はウエルター級だった。5階級制覇メイウェザーはスーパーフェザー級、6階級制覇パッキャオはフライ級が最初だった。あの4人に比べると、軽量で、体格が違う。メイウェザーのファイトスタイルも大きな要因だが、迫力の違いはここにある。

 今や複数階級制覇でステータスを上げていくのは当たり前になった。あの時代がその始まりとも言えるが、同じ中量級でも元の体が違うのだ。今なら俗に言う体幹か。環境、練習、技術など格段に進歩したが、やっぱり芯が違う。体重制、階級制スポーツならではのことだろう。【河合香】