8月28日に日本ボクシングコミッションから発表された最新の日本ランキングで、3人の選手が「JBC預かり」としてランキングを外れた。理由は、いずれも前日計量での体重超過。1カ月間に3例という異常事態に、同月開かれたランキング委員会では、JBCがジム、選手に対して個別に経過説明を求めていくことなどが確認された。

 「体重超過」で思い出すのは、13年12月の亀田大毅-リボリオ・ソリスによるIBF、WBAスーパーフライ級王座統一戦だ。前日計量で、WBA王者ソリスが1・4キロオーバー。規定で2時間以内の再計量が認められていたが、1時間後でも300グラムしか落ちなかった。そして、その直後に“事件”は起きた。

 計量器から下りるやいなやペットボトル入りの水を手にすると、JBC職員の制止を振り切り、そのまま一気飲み。即座にWBAから王座を剥奪された。記者にとって、この試合は初めて担当する世界戦だった。ただでさえ緊張感のある取材の中、怒声は飛び交うわ、ソリスは通路で号泣するわと、現場は大混乱。しかも統一戦でルールも複雑とあり、瞬間的に頭が真っ白になったのを覚えている。

 結局、試合は当日の体重を制限するなどの条件付きで行われ、あろうことかソリスが判定勝ちを収めた。IBF立会人の不手際により大毅の「負けても王者問題」も起こるなど、後味の悪さだけが残る試合となったが、現役選手を含めた多くの関係者がソリスに対する厳罰を求め、同時に「大毅は気の毒だ」という声を上げたのが印象的だった。

 階級制の競技であるボクシングにとって、計量は大前提であり、絶対だ。今回の3例に関して「ジム側と選手のコミュニケーション不足」「ぎりぎりで急激に体重を落とす方法に問題がある」と原因を指摘する声もあるが、極論を言えば最後は選手個人の問題であり、明確な解決策を見つけるのは簡単ではない。

 ただ、「公平性」を欠いた中で試合をしなくてはいけない相手選手は不幸だし、その精神的な動揺は計り知れない。昨今、本場米国でも体重超過は頻発し問題となっているが、ファンの立場からしても「不平等」な試合からボクシング本来の魅力を感じることは出来ない。ボクシング大国の1つである日本だからこそ、大切なものを守ってもらいたいと思う。【奥山将志】