光り輝く主役のそばには大抵、縁の下の力持ちがいる。だが今場所、その姿が1人、いない。安美錦の付け人だった元幕下扇富士の中沢利光さん(38)は4月30日付で引退し、相撲協会営繕部で働き始めていた。
「お話を師匠からいただいて。安美関がけがしている時。離れていいものか、悩みに悩みました。でも、自分の人生だからと快く送り出してもらえた。そんな安美関だから、15年間ついてこれたと思います」
99年11月24日。安美錦の新十両を告げる電話から、付け人になった。15年半もの付け人生活を、1人の関取だけにささげるのは、まれ。伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「自分の人生以上に尽くしてた」と言い、安美錦も「2人で『安美錦』のところがあったね」。付け人とは幕下以下の若い衆。日の目は見ないが、その存在は関取を導く力も持つ。「よくけんかもしましたね。関取はもてはやされます。だから、周りが『イエスマン』だけでは絶対ダメ。正しいと思ったことは譲りませんでした」。
そう言う中沢さんに「仕事に集中できるよう、しょっぱい相撲を取らないようにしないと」(安美錦)。初白星の安美錦に一番胸をなで下ろした人は誰か、言うまでもない。【今村健人】

