今年も土俵上では数々の下克上が起こった。日刊スポーツが独自に調査し、年間を通じて幕内を維持した28人の力士のうち、最も上位を倒した「下克上大賞」に輝いたのは、隠岐の海だった。

 下克上の度合いは枚数差の合計で計算した。例えば東前頭5枚目の力士が東前頭2枚目力士に勝利した場合は3枚差。東前頭5枚目の力士が西前頭4枚目力士に勝った場合は0・5枚差といった具合だ。集計した結果、隠岐の海が合計78枚差でトップ。2位正代の68枚差、3位御嶽海の66・5枚差を引き離し、隠岐の海は「上位キラーね」とニヤリと笑った。

 78枚差の内訳は、初場所15枚差、春場所16枚差、夏場所8枚差、名古屋場所21枚差、秋場所15・5枚差、九州場所2・5枚差だった。名古屋場所では金星を1個獲得。秋場所では2個金星を獲得し、さらに3大関を撃破して初の殊勲賞を受賞した。今年金星を挙げた他力士8人全員が1個ずつの中、唯一の複数獲得。なぜ、それだけ金星を挙げられたのか。隠岐の海は「データがあるんですよ」と不敵な笑みを浮かべた。

 「横綱、大関は前に出られると嫌なんですよ。師匠(元横綱北勝海の八角親方)が良く言ってたんです」。徹底的に前に前に出る稽古をひたすら積んだ。「そういう気持ちでやってから上位に勝てるようになったんです。いかに上に通用する稽古を積むかです」と、堂々とした口調ぶりだった。

 ただ、年間で金星を3個挙げても手放しで喜べないのが現状。番付は上がったり下がったりを繰り返している。「上位と下位とではまた勝ち方違うんですよね~。つかまないと…」。親方のアドバイスプラスアルファの方程式を来年こそ導き出したいところだ。【佐々木隆史】