IBF世界ライトフライ級王者八重樫東(33=大橋)が、家族と3週間の絶縁で王座を守る。同級11位のマルティン・テクアペトラ戦(8日、東京・有明コロシアム)を控え、6日に都内で調印式に臨んだ。前回と同じ2カ月前から平日は単身生活を送るが、今回は3週間前から週末の帰宅もやめた。今日7日は前日計量後の妻子4人との対面も封印し、最後まで気を抜かずに初防衛を期す。

 八重樫は調印式などを終えると、大橋会長らよりも一足先に会場を後にした。「体重はもうリミットに入った」。減量も順調でゴングまであと2日に落ち着いた表情だが、防衛を飾るまでが戦い。「1分、1秒も無駄にしたくない」と、心優しきパパが大きな決断をした。

 2カ月前から前回と同じマンションを借り、妻子4人と離れて単身で生活してきた。昨年末に調整がうまくいったゲンも担いだ。土曜の練習後に自宅へ帰り、1泊してマンションに戻る。子供の顔がエネルギーにもなるが、3週間前からは週末の帰宅もやめていた。

 前日計量後はジム近くで陣営が一緒に食事する。その後に家族と会ってひとときを過ごし、当日計量に備えて都内のホテルに1人で泊まる。これもルーティンだが、今回はここでの家族と対面も封印した。

 試合はゴールデンウイーク最終日。この間は学校も保育園も休みとあって、いつもなら家族で出掛けたりして過ごす。「子供はかわいそう。家族に申し訳ないが集中したい。常に自分の後ろに道はなく、追い込んでやっている。仕事をやるだけ」と話す。家族とはテレビ電話で話し、互いに我慢することにした。

 1週間前には尊敬する拓大の先輩内山が、衝撃の2回KOで王座を陥落した。大橋会長は「内山が負け、今の日本のボクシング界は暗い。この暗さを吹き飛ばしてもらいたい」とハッパをかける。八重樫は「先輩への刺激になれば。拓大魂を見せたい」と決意を口にした。

 一昨年末は当日のリカバリーで調整ミスした苦い思い出もある。「どんな形でも勝ちに執着したい」と、最後の最後まで油断なくリングに上がる。初防衛で強さを示し、家族とは笑顔で3週間ぶりの対面を果たすつもりだ。【河合香】