WBC世界ミドル級4位村田諒太(30=帝拳)が豪快な1回TKO勝ちで世界挑戦に前進した。元WBC米大陸同級王者ジョージ・タドニッパ(37=米国)から初回に左ボディーでダウンを奪うと、再開後に連打を浴びせて一気に試合を決めた。陣営の本田明彦会長は、WBOミドル級王者サンダース(英国)を標的に、世界戦の交渉を本格化させていくと明言。村田が2度目の米国リングで、大きく存在をアピールした。

 めり込むような左ボディーだった。1回、村田は右ストレートで攻め込むと、続けざまにガードの空いた横っ腹に拳を突き刺した。顔をしかめて膝をついたタドニッパがどうにか立ち上がるも、勝負あり。「倒しに行った」とコーナーに追い込むと、今度は顔面への打ち下ろしの右を5連発。レフェリーが試合を止めるのを確認し、表情一つ変えずに両拳を突き上げた。

 プロ最短、わずか112秒のKO劇。デビュー11戦目で初めて左ボディーでダウンを奪うなど、本場ラスベガスのMGMグランドで進化を証明し、強烈なアピールにも成功した。「世界に向けて8合目までは来たのかなと思う。だが、ここから頂上に登るのが一番難しい。もっと上の戦いを見せていきたい」と力を込めた。

 試合後、本田会長は「ミドル級での戦いが完成してきた」と内容を絶賛し、WBO王者サンダースをターゲットに世界挑戦を目指した交渉を進めていくと明言。「向こうがOKなら、いつでもどこでもやる」と話し、村田が契約する米プロモート大手トップランク社のボブ・アラムCEOが、週明けにサンダース陣営のプロモーターと会談予定であることも明かした。

 サンダースは、12月に現役トップクラスの人気を誇る前WBC同級王者アルバレス(メキシコ)と対戦するとの情報もあり、村田サイドも交渉が容易でないことは想定済み。本田会長は「世界挑戦するのが本当に難しい階級。だめなら、1試合挟んで待つ」と幅を持って状況を見守っていく方針で、世界挑戦できない場合は、11月ごろに世界ランカーと対戦する見込みだ。

 村田は全試合終了後、海外メディアが集結した公式会見に出席。表情を引き締め「近い将来、世界タイトルが出来るように頑張っていきたい」と宣言した。デビューから3年。30歳を迎えた金メダリストが、夢にまた1歩前進した。【奥山将志】