<K-1:ワールドGP決勝大会>◇6日◇横浜アリーナ

 年間王者を決めるはずの晴れ舞台が、最悪の反則決着になった。決勝はバダ・ハリ(23=モロッコ)が2回に、もつれて倒れたレミー・ボンヤスキー(32=オランダ)にパンチを浴びせ、側頭部を踏みつける悪質な反則行為を犯し、失格負けした。ボンヤスキーは4年ぶり3度目の優勝にも笑顔はなく、ハリは規定によりファイトマネーを全額没収。今後も出場停止などの厳罰処分が下される可能性が出てきた。16回目を迎えた「WORLD

 GP」の歴史を汚す結末となった。

 前代未聞の反則劇は2回に起きた。53秒、ハリが突然暴走した。もつれて倒れたボンヤスキーに、左右のパンチを浴びせ、左足で思い切り右側頭部を踏みつけた。角田レフェリーが慌てて制止に入ったが、ボンヤスキーのダメージは深刻だった。GP決勝戦ということもあり、ハリに警告を出し、5分間の休憩時間を取ったが、ボンヤスキーは物が2重に見える状態で、回復しなかった。結局、同レフェリーはレッドカードを提示して失格を宣言。「立ち技世界一」を決めるはずの晴れ舞台が、最悪の結末で幕切れを迎えた。

 3度目の優勝にもボンヤスキーは「こういう形で決勝を終えることが不本意」とリング上で無念の涙を流した。一方のハリには反省のかけらもなかった。「熱くなってしまった。でも(ボンヤスキーは)結果が出た瞬間に立ち上がった。ダメージはないはずだ。主演男優賞の才能があるんじゃないのか」とうそぶいた。

 もともと2人は犬猿の仲だった。主力選手が欠場した03年王者のボンヤスキーを、ハリは以前から「フェイク(偽物)王者」と見下していた。昨年12月のGP準々決勝での対戦は、微妙な判定でボンヤスキーが勝った。これがさらに2人の溝を深めた。もともとハリは会見で選手に殴りかかるなど、自制が利かない面があった。この日、初回にダウンを奪われたことで、冷静さを失っていた。

 ハリの行為に、谷川貞治イベントプロデューサー(EP=47)は「ファイトマネーはルール通り100%没収。2位の賞金(3万ドル=約285万円)については協議して決める。出場停止や罰金などの措置も考えていきたい」と厳罰処分を下す意向を明らかにした。WORLD

 GPが開幕して16年。大衆に支持されるスポーツを目指してきたK-1にとっても、ハリの反則行為は大きなダメージになった。【山田大介】