<女子プロボクシング:WBC世界ライトフライ級暫定タイトル戦10回戦>◇8日◇東京・後楽園ホール

 助産師王者が逆転KOでベルトを守った。ライトフライ級暫定王者富樫直美(33=ワタナベ)は、初回に元ミニフライ級王者菊地奈々子(33)の右フックを浴びてプロ初ダウンを喫した。しかし、その後は先手先手と攻めて手数で圧倒。菊地の左目が腫れ上がり、レフェリーストップとなり、最終10回21秒でTKO勝ちで初防衛に成功した。富樫は通算5勝(4KO)、菊地は9勝(3KO)3敗1分けとなった。

 まさかの立ち上がりだった。初回の30秒すぎ、右フックをまともに浴びて、富樫はその場に尻もちをついた。プロ5戦目、スパーリングでも喫したことのダウンだ。「何が起きたか、サッパリ分からなかった。セコンドに聞いて、びっくりした」。

 富樫は昨年プロに転向し、まだ4戦で16ラウンドしか戦っていない。相手の菊地はプロ6年目で12戦で74ラウンド。キャリアの差からも勝負は早いと思われ、4回を終わっての採点も1-2で負けていた。

 セコンドから「腰が浮いて、ボディーが出ていない」のアドバイスで自分のボクシングに立ち返った。3回からは左右のボディーで反撃。ワンツーも決まりだす。右のストレートが何発もクリーンヒット。菊地のパンチも浴びるが、最後まで手も足も止まらず攻める。菊地の左まぶたが腫れだし、9回に2度ドクターチェック。そして、最終10回、3度目のチェックでTKO。鮮やかな逆転防衛だった。

 7月に韓国で世界初挑戦で王座をつかんだ。助産師でもあり、国内での初防衛戦も元王者との日本人初対決となり、にわかに注目度が増した。「緊張の毎日をすごしてきた」という。それでも夜勤にもある仕事をこなしながら、苦しい練習をしてきた。

 これまではサインを求められても、暫定をつけようか迷ったという。「これで胸を張ってチャンピオンと言えます」。ファイトマネーも前回の3倍以上となる1万5000ドル(約142万5000円)を手にする。太り気味で始めたボクシングだが、堂々の女王となった。

 今までに300人以上の子供を取り上げた。「出産は命懸け」と言う。仕事でもリングでも修羅場に強いわけだ。ただし、自分の出産は当分お預け。次は統一戦が待ち受けるが、まずは9日から仕事に戻る。