31日の「Dynamite!!」で総合格闘技家としてデビューする石井慧(23=アイダッシュ)から奔放な「石井節」が消えた。吉田秀彦(40=吉田道場)との対戦に向けて30日、東京・江東区のホテルで計量を終えた直後に口を開いたが、報道陣の質問に不機嫌になるピリピリムード。ほとんどの出場選手が出席した、新宿ステーションスクエアでの公開記者会見を欠席した。

 吉田より6キロ軽い104キロで計量を終えたジャージー姿の石井から得意の「石井節」は出なかった。「相手がいることなので、うまいこといくとは思っていない。練習したことしか出ないから」とポツリ。「1年間の練習で自信を持つ技を何か見つけたか」との質問に「そんなの言えないのに聞かれても…。無駄な質問」。露骨に不快感を示した。

 報道陣の取材には応じるものの笑顔はなく、終始ピリピリムード。その中で、試合当日にはくトランクスは「似合う」という理由から赤で、入場曲には昨年グラミー賞を獲得した米国のヒップホップ歌手カニエ・ウェスト(32)の「アメイジング」を使うと明かした。曲には「おれは怪物だ」と、自らを鼓舞する内容の歌詞もあり、海外武者修行の際も「よく聞いていた」という。

 約3週間に及んだ米ハワイでの練習から24日に帰国後は、吉田の明大監督時代の教え子で、かつて吉田を破ったバーネット(米国)と、11月3日のIGF東京大会で対戦したプロレスラーの沢田敦士(IGF)を相手に調整。その沢田は「柔道時代からのすり足がなくなって、ステップが踏めている。打撃の圧力はバーネットより上かも」と、石井の勝利を予想した。

 計量後、新宿駅近くで行われた公開記者会見には、吉田や魔裟斗らほとんどの選手が出席する中、プロデビュー前の選手としては異例の欠席。石井サイドの関係者は「最初の戦極側との契約の際に、前日会見は別々にやる予定だったから」と説明したが、「Dynamite!!」主催のFEG谷川EPは「プロなんですから露出した方がいい。もったいない」と苦言を呈した。

 プロ転向表明から約1年。「60億分の1の男」を目指すと豪語した北京五輪金メダリストが、いよいよベールを脱ぐ。【塩谷正人】