プロ野球から総合格闘家に転向した古木克明(30=スマッシュ)が、北京五輪柔道金メダリスト石井慧(24=アイダッシュ)直伝の「不動心」を胸に、格闘家初戦に臨む。大みそかDynamite!!での総合格闘家デビューが決まり、21日に都内のホテルで会見した。格闘家に転身した石井との合同練習で、精神的な成長を実感。対戦相手アンディ・オロゴン(27=ナイジェリア)の揺さぶりにも動じず、静かに闘志を燃やした。

 リングで生きる覚悟の証しだった。会見冒頭、古木はオロゴンからバットを手渡された。プロ野球界への未練を問うかのような、精神的揺さぶり。それを「どうでもいいや」と受け流し、平然と受け取った。お返しに、格闘家らしい鋭い眼光を向けた。

 昨冬、オリックスから戦力外通告を受けた。松坂世代の大物スラッガーにとっては、思わぬ宣告だった。時を同じくするように受けた格闘家転向のオファーに、「まだ体が動くうちに、やりたいことをやりたい。もうひと花、咲かせたい」と飛び付いた。その年の大みそかには、Dynamite!!でデビューした石井の試合をテレビで見た。「自分も来年はこの舞台を目指したい」。覚悟を決めて、1日6~8時間、週5~6回ペースの厳しい練習を積んできた。

 石井の存在も刺激になっている。石井が米国から帰国した際に2~3度、合同練習を行った。「石井選手とは、戦いに向かうひたむきな姿勢が似ている。僕も何万人の前で打席に立ったときは、気持ち良かったですから」。スパーリングでは、攻撃を恐れず敢然と前に出る不動の心を盗み取った。10月のスパーでは、石井とも真正面から打ち合えるようになった。

 親友の俳優高岡蒼甫(28)には、セコンドに付いてもらうようお願いするという。ただ、入場テーマ曲など、試合当日の演出はまったく考えていない。それほど練習に集中している。格闘技の練習で首が太くなり、ワイシャツも1~2サイズ上でないと入らなくなった。プロ野球選手から格闘家へ。大みそかは、変身の過程を見せる舞台になる。【森本隆】