<プロボクシング:WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京・両国国技館

 WBC世界フライ級王者の八重樫東(30=大橋)が、2度目の防衛に成功した。同ライトフライ級王座を10度防衛した同級1位の最強の挑戦者エドガル・ソーサ(34=メキシコ)とメーンで激突。序盤からフットワークで試合の流れをつかみ、的確なパンチを浴びせ続けた。経験で上回る相手を3-0の大差判定で退ける完勝で、2階級制覇を果たした13年を最高の形で締めくくった。

 プラン通りの完勝だった。勝ち名乗りを受けた八重樫は、ホッとしたような表情を浮かべ、勝利の味を静かにかみしめた。陣営が「作戦通り」と声をそろえた通り、序盤から足で相手を翻弄(ほんろう)した。

 入り際の左ジャブ、打ち終わりの左フックを次々と打ち込むと、左右に動き回りソーサのパンチをことごとくかわした。7回、8回には無理に前に出てくる相手をさばき、強烈なワンツーを浴びせるなど圧倒。「(ソーサは)スピードはないが、近いところのボディーはリスクがある。打ち気をそらすつもりで動いていた。今日の試合は勝つことに徹した」と振り返った。

 強さを見せつけたV2達成も、体は万全ではなかった。10月に故郷岩手で開催された「いわて北上マラソン」にゲストランナーとして出場。4時間6分でゴールも、右膝に痛みを感じた。同月末に精密検査を受けるほどの状態で、悪化を防ぐためロードワークを回避。世界戦前の恒例だった静岡・伊東市内での走り込み合宿も断念した。

 昨年6月の井岡一翔との2団体王座統一戦で壮絶な打ち合いを展開するなど「激闘派」の印象が強いが、本来は足を使ったボクシングが持ち味。武器を磨き上げることが出来ず、不安を抱えたままリングに上がらざるを得ない状況だった。

 9回以降は、その影響も出た。8回終了時の公開採点で大差リードも、打ち合いを展開。土居進トレーナー(43)はこれも想定内だったと話す。「9回あたりでばてると思っていた。最後は気力でとお願いしていた」と王者の精神力にかけていた。

 試合後に会場のファンに「面白くなかったですよね」とわびたが、王者であり続けなくてはならない理由もあった。来年2月15日には大橋ジムの設立20周年パーティーが行われる。大橋会長から現役王者としての出席を要望されており、「チャンピオンとして参加できるのにはこだわっていた」とベルトで花を添えられることを喜んだ。V3戦は3月か4月が有力。13年を無敗で終えた八重樫は、勢いをさらに加速させた。【奥山将志】

 ◆八重樫東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手・北上市生まれ。黒沢尻工1年でボクシングを始め、3年時の総体で優勝。拓大2年時の国体でライトフライ級優勝。卒業後に大橋ジム入りし、05年3月プロデビュー。06年4月に東洋太平洋ミニマム級王座獲得。07年にプロ7戦目で当時のWBC同級王者イーグル京和に挑戦も判定負け。11年10月にWBA世界同級王座獲得。12年6月に井岡一翔とWBA・WBC団体王座統一戦に臨むも判定負け。13年4月にWBC世界フライ級王座を獲得し、2階級制覇。家族は彩夫人と長男圭太郎君、長女志のぶちゃん、次女一永ちゃん。身長162センチの右ボクサーファイター。