館内から漏れた大きな悲鳴とため息が、すべてだった。大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が挑んだ横綱白鵬(31=宮城野)との全勝対決。19秒1の攻防の果てに今場所初めて、土俵に転がった。

 威風堂々-。緊張をまるで感じさせず、落ち着いた表情で挑んだ立ち合い。得意の左四つに“させてもらった”。横綱の出足を組み止めて、右上手を引きながら寄り返す。何度も勝機はあった。だが、最後は横綱の下手投げに、自身の左下手が切れて、足も前に出なかった。敗因を尋ねられて「見ての通りですね」と悔しそうにつぶやいた。

 過去、白鵬の大きな連勝を止めてきた一方で、互いに優勝争いを演じた直接対決では幾度となく煮え湯を飲まされてきた。またしても超えられなかった最大の難関。「集中してやれたと思いますけど…」と唇をかんだ。

 優勝の可能性は大きく遠のいた。ただ、綱とりを今後につなげる上では、まだ終わっていない。残る横綱との2番は大きな意味を持つ。「明日は明日で。しっかり集中して…」。自分に言い聞かせるように、つぶやいた。