日本相撲協会は9日、秋場所(11日初日、東京・両国国技館)の取組編成会議を開き、3場所連続で綱とりに挑む大関稀勢の里(30=田子ノ浦)は初日に東前頭筆頭の隠岐の海、2日目に先場所敗れた小結栃煌山と組まれた。初優勝が条件の綱とりに3場所連続で挑むのは平成以降、93年九州場所の貴ノ花(当時)以来3人目。過去の2人はいずれも序盤の黒星でついえており、出だしが鍵になる。

 稽古場に来たとき、稀勢の里の体には既に大粒の汗が浮かんでいた。さらに、土俵の上でみっちりと汗をかく。そして、最後は立ち合いを確認すると、すぱっと切り上げた。どこか感覚にズレを覚えて、何度も立ち合いを動画で確認した先場所前とは違う。「(先場所と比べて)いい具合にやれたと思います」と、スッキリした表情を浮かべた。

 初日、2日目に決まった相手はともに実力者。特に栃煌山には先場所5日目で苦杯をなめた。「やっぱり、上位に来ている力士は油断できない。気を引き締めたい」と言い聞かせた。

 3場所連続の綱とり。そこに精神的な疲れがないはずはない。平成以降、同じ境遇を味わったのは89年名古屋の旭富士と93年九州の貴ノ花の2人だけ。集中力を維持することは難しく、2人はいずれも序盤に敗れて、大きく崩れた。直前の2場所から蓄積され続けた疲れは、想像を絶する。

 ただ、右足かかとの痛みで夏巡業前半を休場したことは、心身のいい休養にもなった。鍵となる序盤を乗り切れるか。「今場所は今場所で(優勝を)目指してやるだけ」と力を込めた。

 昇進を預かる審判部の条件は「優勝」。友綱副部長(元関脇魁輝)はそこに「変わりない」と言った。その初優勝へ、最大の壁である横綱白鵬は休場でいない。二所ノ関部長(元大関若嶋津)は「(優勝争いは)混戦になるだろう。大関が優勝してくれないと。みんな期待している」とした。今場所で決めたいか-。聞かれた稀勢の里は「しっかり、やることをやって(力を)出すだけ」と答えた。【今村健人】