西前頭筆頭の御嶽海(24=出羽海)が横綱日馬富士を寄り切りで破り、初金星を挙げた。所要12場所目での初金星は、幕下付け出しでは千代大龍と並んで8位タイのスピード記録。長野県出身力士の金星は、1955年初場所初日に西前頭5枚目の大昇が栃錦に勝って以来62年ぶりだ。

 右四つの組み合いから、土俵際に押したのは御嶽海だった。追い込まれ、回り込もうとした日馬富士を右膝をうまく使って逃がさなかった。差した右手を離さず、頭と腰をくっつけたまま寄り切った。八角理事長(元横綱北勝海)が「技能相撲だ」とうなった内容で初金星。「めちゃくちゃうれしいです。テレビではよく見てたけど、土俵の上で見るとめちゃくちゃうれしいです」と、目の前で座布団が舞う景色に感動した。懸賞金は自己最多の32本で手取りで96万円。「親にちょっとあげようかな」と恥ずかしそうに話した。

 昨年の名古屋場所と九州場所に続き、3場所目となった横綱戦。今までとは、はっきりと違う感覚があった。「周りも見えるし、声援も聞こえる」と気持ちの余裕が出てきた。昨年名古屋場所では、3横綱になすすべもなく敗れた。そのことが頭を離れなかった。それが今では「どういう風に負けたかが分かる」と自己分析できるまでに成長。理由は「慣れです」と高い適応能力を見せている。

 土俵の外にも競い合う仲間がいる。東洋大の後輩で16年リオデジャネイロ五輪の競泳男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(22)だ。「金メダル取ろうが、後輩は後輩」と特別視はせず。こちらも“金”を手にして先輩としての面目を保った。一緒に食事にも行く仲で、初場所後に約束した食事会にうれしい手土産ができた。

 初詣で引いたくじは「凶」。書いてあった言葉は「争い事は困難」。「『一番ダメじゃん』って思ったけどいつも通りに、ということでしょう」とプラスにとらえた。新小結で迎えた昨年九州場所は6勝9敗で、1場所で陥落。「早く戻りたい」と短い言葉に力を込めた。【佐々木隆史】

<御嶽海久司(みたけうみ・ひさし)アラカルト>

 ◆本名 大道久司。1992年(平4)12月25日、長野県上松町生まれ。木曽青峰高-東洋大。178センチ、158キロ。血液型O。家族は父春男さん(67)と母マルガリータさん(46)。

 ◆相撲のきっかけ 運動神経に自信があった小1時、長野・木曽町で開かれた大会で初めて相撲に挑戦するも、体が小さい子に負けて、悔しくてのめり込む。

 ◆鍛錬 小学校のときに父と約束し、自宅の庭石の上で毎日400回、四股を踏むことを日課にした。

 ◆プロ入り 東洋大4年時にアマチュア横綱と学生横綱の2冠。当初は和歌山県庁への就職を考えていたが、プロ入りに傾く。反対だった両親を説得して、クリスマスイブ直前に決断。

 ◆長野 長野県出身の関取は元幕内大鷲以来、47年ぶり。地元では「木曽の星」として大フィーバー中。

 ◆得意 母の母国語のタガログ語を話せる。好きな食べ物は特に魚、刺し身。好きな力士は武双山。